この記事の要点
- 40〜44歳の転職者は43.9%が年収増加し、35〜39歳の40.8%を上回ります(出典:厚生労働省)
- 賃金の増減収支が明確なマイナスに転じるのは50〜54歳(-12.8ポイント)からです
- 人材紹介の平均手数料は1件約93万円、JAC Recruitmentでは270万円超と推計されます
- 早期離職では紹介手数料の最大100%が返金され、エージェント側が大きな損失を負います
- 2024年・2025年施行の職業安定法改正で労働条件明示や手数料公開が義務化されました
「35歳を過ぎると転職で年収は下がる」――そう思い込んでいる人は少なくありません。しかし厚生労働省の調査を確認すると、35歳前後で賃金が一律に下がるという事実は見当たりません。むしろ40〜44歳のほうが、35〜39歳よりも転職で年収を上げた人の割合が高いというデータが存在します。
「35歳転職限界説」が根強く語られる背景には、年齢そのものではなく、転職によって勤続年数がゼロにリセットされるという別のメカニズムがあります。あわせて、転職を仲介する人材紹介会社の収益構造や、2024年・2025年に施行された職業安定法の改正内容を押さえておくと、通説の実像がより立体的に見えてきます。本記事では、公的統計と業界データをもとに、中途採用市場の現在地を整理します。
「35歳転職限界説」とは何か
「35歳転職限界説」とは、35歳を境に中途採用の求人が急激に減り、転職できたとしても賃金などの労働条件が悪化するという言説です。この考え方は、終身雇用と年功序列を前提とした「メンバーシップ型雇用」の時代に、企業が組織内の年齢バランスや人材育成コストの回収期間を踏まえ、35歳前後を中途採用のデッドラインとみなしていた実態に由来するとされています。
少子高齢化による人手不足や、専門スキルを持つ即戦力人材を外部から獲得する「ジョブ型雇用」の広がりによって、中途採用市場の前提は大きく変わってきました。それでも「35歳」という年齢は、採用の現場やキャリア相談の場面で心理的な壁として語られ続けています。次章では、この通説を公的統計で確かめます。
厚生労働省の統計で見る年齢階級別の賃金変動
厚生労働省「令和5年上半期雇用動向調査結果の概況」は、転職者が前職と比べて賃金が増加したか減少したかを年齢階級別に集計しています(出典:厚生労働省「令和5年上半期雇用動向調査結果の概況」)。

| 年齢階級 | 賃金増加(%) | 賃金減少(%) | 増減の差(ポイント) |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 54.0 | 19.3 | +34.7 |
| 25〜29歳 | 47.7 | 22.3 | +25.4 |
| 30〜34歳 | 47.4 | 32.6 | +14.8 |
| 35〜39歳 | 40.8 | 31.4 | +9.4 |
| 40〜44歳 | 43.9 | 26.1 | +17.8 |
| 45〜49歳 | 38.0 | 28.1 | +9.9 |
| 50〜54歳 | 25.3 | 38.1 | -12.8 |
| 55〜59歳 | 30.2 | 35.8 | -5.6 |
| 60〜64歳 | 11.5 | 65.6 | -54.1 |
この表を見ると、「35歳転職限界説」が想定するような、35歳を境にした賃金減少比率の急増は確認できません。30〜34歳で賃金が減少した割合は32.6%ですが、35〜39歳では31.4%、40〜44歳ではさらに26.1%へと低下しています。増加割合から減少割合を引いた差分も、35〜39歳が+9.4ポイントであるのに対し、40〜44歳は+17.8ポイントと、むしろ40代前半のほうが好条件で転職している人の割合が高いことが分かります。
賃金の増減収支が明確なマイナスに転じるのは50〜54歳(-12.8ポイント)からです。統計上は、少なくとも35歳前後で「転職すれば給与が下がる」とは言えないことになります。ただし、これは年齢階級全体の傾向であり、個々の職種や経験、転職先の事情によって結果は変わり得る点には注意が必要です。
なぜ35歳が意識されるのか:勤続年数のリセット
それでもなぜ「35歳」が強く意識されるのでしょうか。背景には、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に表れる年功的な賃金カーブがあります(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。

| 属性 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均賃金月額 |
|---|---|---|---|
| 常用労働者全体 | 44.1歳 | 12.4年 | 330,400円 |
| 男性労働者 | 44.9歳 | 13.9年 | 363,100円 |
| 女性労働者 | 42.7歳 | 10.0年 | 275,300円 |
男性労働者の賃金は55〜59歳でピーク(445.6千円)を迎え、女性労働者は45〜49歳および55〜59歳でピーク(305.7千円)となります。年齢や勤続年数が積み上がるほど賃金が上がるこのカーブのもとでは、新卒から10年以上勤務した35歳前後の社員は、勤続年数に応じた「年功プレミアム」を受け取っている状態にあります。
ところが転職によって他社へ移ると、それまで積み上げてきた勤続年数は0年にリセットされます。転職先は、その人物が自社にどれだけ定着し、機能するかが不透明な段階で、前職と同水準の年功プレミアムを上乗せすることには慎重です。結果として、転職市場での賃金は、社外でも通用する専門スキルやマネジメント実績といった市場価値をもとに厳しく値踏みされます。社内でしか通用しない業務知識しか持たない人が転職を試みると、市場価値と前職年収の間にギャップが生じやすく、これが「35歳限界説」の実態に近いと考えられます。年齢の限界というより、スキル評価が厳格化される現象と言えそうです。
転職エージェントの収益構造と完全成功報酬型ビジネス
中途採用の労働移動は、有料職業紹介事業者(転職エージェント)の仲介によって支えられています。厚生労働省「職業紹介事業報告書」によると、有料職業紹介事業者の手数料収入は拡大が続いています(出典:厚生労働省「職業紹介事業報告書」)。
| 項目 | 令和4年度 | 令和5年度 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 常用求人数(有料) | 10,688,440人 | 11,856,612人 | 10.9%増 |
| 常用就職件数(有料) | 774,451件 | 843,950件 | 9.0%増 |
| 手数料収入総額 | 約7,703億円 | 約8,362億円 | 8.6%増 |
| 常用就職1件あたり平均手数料 | 約94万円 | 約93万円 | 1.0%減 |
人材紹介の手数料は「完全成功報酬型」で、求職者の入社が決まった段階で発生します。契約上の紹介手数料率は、理論年収の30%〜35%が一般的とされています。

ハイクラス領域に特化した株式会社JAC Recruitmentの開示データでは、平均決定年収が750万円以上(東京の登録決定者平均は898.5万円)、紹介手数料率は理論年収の36%以上とされています(出典:JAC Recruitment開示資料)。これらを掛け合わせると、1件あたりの手数料は270万円超になると推計され、同社社員の平均年収815万〜816万円(平均年齢35.0歳、平均勤続年数3.9年)を支える収益源になっているとみられます。
早期離職はエージェントにとって最大の赤字リスク
求職者1人を採用に結びつけるまでには、職種によって大きなマーケティングコストがかかります。
| 獲得ターゲット | 応募登録CPAの目安 |
|---|---|
| ITエンジニア(正社員) | 10,000円〜90,000円 |
| ドライバー(大型免許) | 50,000円〜100,000円 |
| 施工管理(正社員) | 20,000円〜30,000円 |
| 看護師(常勤) | 5,700円〜46,000円 |
| 営業職(正社員) | 6,000円〜45,000円 |
| 事務職(正社員) | 3,000円〜5,000円 |
面談着座までのCPAは25,000円〜50,000円、1名の入社決定に至るまでの実質的なコストは20万円〜50万円に達するとされます。これほどのコストをかけて採用にこぎつけても、早期に離職されると、紹介会社は求人企業に手数料を返還しなければなりません。

| 在籍期間 | 一般的な返金率の相場 |
|---|---|
| 入社後7日〜30日以内 | 80%〜100% |
| 入社後31日〜90日以内 | 50% |
| 入社後91日〜180日以内 | 10%〜30% |
入社1ヶ月未満で退職された場合、紹介会社は最大100%の手数料を返還することになります。獲得広告費やコーディネーターの人件費は戻らないため、早期離職は紹介会社にとって大きな損失になります。この構造は、紹介会社が「とにかく転職を成立させる」よりも「定着する組み合わせを探す」方向に向かう規律として働いていると考えられます。
2024年・2025年施行の職業安定法改正
情報の非対称性を減らし、公正な取引環境を整えるため、職業安定法の改正が相次いで施行されています。
2024年4月施行分では、求人情報を出す段階で、雇入れ後に生じ得る「業務内容の変更の範囲」や「就業場所の変更の範囲」、有期雇用契約の更新上限を明示することが義務づけられました。想定外の職種転換や勤務地変更によるミスマッチを防ぐことが狙いです。
2025年4月施行分では、有料職業紹介事業者に対し、取扱職種ごとの平均手数料率の実績を毎年公開することが義務化されました(対象は紹介実績上位5職種、年間10件以下の職種は対象外)。あわせて、途中解約時などの違約金規約の明示義務化や、求職者への転職祝い金などの金銭提供の全面禁止も定められています。
「手数料30%超は違法」という誤解を解く
職業安定法を調べると「支払われた賃金の10.8%」という手数料の上限規定が見つかるため、業界で一般的な「理論年収の30%〜35%」という料率は違法ではないかと感じる人もいます。
実際には、職業安定法上の手数料には「上限制手数料」と「届出制手数料」の2種類があります。法律本文が定める上限制は賃金の10.8%を上限とする原則規定ですが、これとは別に、あらかじめ手数料表を厚生労働大臣に届け出た上で徴収する「届出制手数料」という仕組みがあります。現在、一般的な有料職業紹介事業者はほぼすべてこの届出制を選択しており、理論年収の35%(またはそれ以上)を手数料として届け出て運用しています。上限制と届出制という二重構造を知らないと、合法的に運用されている料率を誤解しやすい点には注意が必要です。
まとめ
厚生労働省の統計を確認する限り、「35歳を過ぎると転職で年収が下がる」という通説は、少なくとも年齢階級全体の傾向としては当てはまりません。40〜44歳は35〜39歳よりも年収アップの割合が高く、賃金の増減収支が明確なマイナスに転じるのは50〜54歳からです。35歳という年齢そのものよりも、転職に伴う勤続年数のリセットと、それによって社内限定の年功プレミアムが失われることのほうが影響していると考えられます。
また、転職を仲介するエージェントの収益構造や、2024年・2025年の職業安定法改正の内容を知っておくことは、転職活動を進める上での判断材料になります。ただし、実際の転職結果は、職種や経験、転職先の事情によって大きく異なります。本記事の統計はあくまで全体傾向であり、個別の年収やキャリアの見通しを保証するものではない点にご留意ください。
動画で見る
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よくある質問
35歳を過ぎると転職で年収は下がりますか?
厚生労働省の調査では、35歳前後で賃金が下がった人の割合が急増する傾向は確認できません。40〜44歳は35〜39歳より年収が増加した人の割合が高く、収支が明確にマイナスへ転じるのは50〜54歳からです。ただし結果は職種や経験によって異なります。
「勤続年数のリセット」とは何ですか?
転職すると、それまで積み上げた勤続年数はゼロに戻ります。企業は年功に応じた社内評価(年功プレミアム)ではなく、社外でも通用する市場価値をもとに賃金を決めるため、年齢よりも保有スキルの性質が待遇を左右します。
紹介手数料が理論年収の30%を超えるのは違法ではないのですか?
職業安定法には賃金の10.8%を上限とする「上限制手数料」のほかに、厚生労働大臣へ届け出て運用する「届出制手数料」があります。多くの事業者は届出制を選び、理論年収の35%程度の料率でも合法的に運用しています。
転職エージェントは早期に離職させたほうが儲かるのですか?
早期離職の場合、紹介会社は最大100%の手数料を返還する必要があり、求職者の獲得に要した広告費や人件費が丸ごと損失になります。そのため多くの紹介会社は、回転率よりも定着率の高いマッチングを重視しています。
次にやること
業界の構造を理解したうえで、自分の条件が相場のどこにあるかを確認します。
- 賃金構造基本統計調査で、自分の職種・年齢・地域の水準を確認する
- 現職の労働条件通知書で、割増賃金や手当の計算根拠を確かめる
- 相場観は1社の提示額ではなく、複数の求人情報で確認する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 17件。数値は各機関の公表時点のものです。
- 3 転職入職者の賃金変動状況(mhlw.go.jp)
- 令和6年の賃金構造基本統計調査の結果を公表 一般労働者の賃金月額は33万400円で過去最高 伸び率も33年ぶりの水準(厚労省) | 社会保険労務士PSRネットワーク(psrn.jp)
- 令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況 – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 賃金構造基本統計調査 調査の概要 – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 年齢階級別にみた賃金 ―賃金構造基本統計調査の結果から – 労働政策研究・研修機構(JILPT)(jil.go.jp)
- 令和4年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 採用CPA相場を職種別に比較|計算方法と費用を抑える7つの施策【2026年版】(buddy-data.co.jp)
- 人材紹介の手数料相場は?計算方法や返金規定、10サービスの手数料比較 – Wantedly(wantedly.com)
- 職業安定法第32条の13に基づく開示事項|株式会社メドレー(medley.jp)
- 人材紹介手数料の相場は?計算方法と返還金制度をわかりやすく解説 – みらいワークス(mirai-works.co.jp)
- 【独自】JACリクルートメントの年収・役職別給与を解説 – タレントスクエア(talentsquare.co.jp)
- 【2026年5月最新】JACリクルートメントは平均年収815万円|評価制度や働き方に対する口コミ暴露! – アクシス株式会社(Axxis inc.)|転職エージェント(人材紹介)(axxis.co.jp)
- 東京の平均年収はいくら?年代別・23区別や中央値を解説 – JAC Recruitment(jac-recruitment.jp)
- 人材紹介コンサルタント/人材法人営業/アウトソーシング法人営業(directscout.recruit.co.jp)
- [2181.T] 2026年3月期 有価証券報告書 – BigGo ファイナンス(finance.biggo.jp)
- 有価証券報告書 – PERSOL(パーソル)グループ(persol-group.co.jp)
- 求職者集客の完全ガイド|10チャネル比較・CPA相場・歩留まり管理まで(kyusyokusyasokyaku-no-madoguchi.com)
- 人材紹介の手数料相場を解説。計算方法から返金制度を紹介 | お役立ち情報(sales-marker.jp)
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本記事に掲載する年収・待遇等は公表統計に基づく一般的な水準であり、個別の求人条件を保証するものではありません。
本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。
本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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