この記事の要点
- 厚労省統計の弁護士年収981万円に対し、勤務弁護士の提示額ベース年収中央値は約687万円です
- 税理士の開業所得は中央値300万円以下で、300万円以下の層が全体の26.0%を占めます
- 弁護士の年間収入(売上)2,082.6万円のうち、所得(手取り)は1,022.3万円に留まります
- 行政書士は独立開業者の78.0%が年間売上高500万円未満という統計があります
- 開業社会保険労務士の約1割は顧問先ゼロで、売上中央値は平均値の3分の1の550万円です
「士業は高年収」というイメージは、資格取得を検討する人が真っ先に目にする情報のひとつです。しかし結論から言うと、ネットや資格対策サイトでよく紹介される「弁護士981万円」「税理士856万円」といった数値は、公的統計の集計方法に起因する構造的な水増しを含んでおり、実際に勤務した場合や独立開業した場合の手取りとは大きな開きがあります。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は常用労働者10人以上の事業所のみを対象としているため、個人事務所や零細事務所で働く低賃金層が統計から漏れ落ちやすい構造になっています。加えて、職種分類が粗く、性質の異なる職種がひとつのカテゴリにまとめられている点も、平均値を押し上げる要因です。この記事では、公的統計と各士業団体の実態調査を突き合わせ、弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士の年収の実相を整理します。

ネット上の「士業=高年収」神話はなぜ生まれるのか
資格対策サイトや転職メディアで紹介される士業の平均年収は、多くの場合、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の職種別データをそのまま引用したものです(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。しかし弁護士の公称年収981万円に対し、実際の求人・提示額ベースでの勤務弁護士の年収中央値は約687万円にとどまります。税理士も同様で、公称856万円に対し、会計事務所の採用マーケットでの実相は570万円(東京地区619万円、地方都市533万円)です。行政書士についてはネット上で「591万円」という数値が頻繁に引用されますが、独立開業者のうち年間売上高500万円未満の層が78.0%を占めるという業界団体の実態調査結果と、公称値との間には大きな乖離があります。
公的統計が実態より高く出る2つの理由
公称値が実態より高く出る背景には、2つの構造的な理由があります。
1つ目は事業所規模によるサンプリングバイアスです。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は常用労働者10人以上の事業所を対象としているため、弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士の多くが所属する個人事業や小規模事務所の若手・低賃金層が統計の対象から構造的に除外されます。結果として、組織化に成功した大規模事務所や法人の高給待遇者のみがデータに反映されます。
2つ目は職種分類の粗さです。「公認会計士,税理士」という分類には、監査法人で高給を得る公認会計士と一般の会計事務所で働く税理士が合算されています。「法務従事者」という分類には、企業法務を扱う弁護士や弁理士と勤務司法書士が同一枠に含まれており、司法書士の公称年収765.3万円はこの合算値に依存しています。「他に分類されない専門的職業従事者」には行政書士が速記者などとともに含まれており、行政書士単体の実態を表すものではありません。

「収入」と「所得」を混同すると年収は倍近く変わる
独立開業者の年収を考えるうえで見落とされがちなのが、「収入(売上)」と「所得(経費を差し引いた手取り)」の違いです。日本弁護士連合会『弁護士白書2023年版』によると、開業弁護士の平均収入(売上額)は2,082.6万円ですが、事務所賃料や判例検索データベースの利用料、事務員の人件費、弁護士会費などの事業経費を差し引いた平均所得は1,022.3万円と、ほぼ半分になります(出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2023年版」)。
| 項目 | 平均値 | 中央値 |
|---|---|---|
| 年間収入(売上額) | 2,082.6万円 | 1,500万円 |
| 年間所得(手取り) | 1,022.3万円 | 800万円 |
出典:日本弁護士連合会『弁護士白書2023年版』
所得の中央値はさらに800万円へと下がり、一部の高所得層が平均を押し上げていることがわかります。なお、この所得中央値は国税庁「民間給与実態統計調査」が示す一般サラリーマンの平均給与460万円と比較すると依然として高水準ですが、経費負担のない給与所得者との単純比較はできない点に注意が必要です(出典:国税庁「民間給与実態統計調査」)。

資格別に見る年収の実態(勤務・独立の比較表)
公的統計の公称値と、各士業団体の実態調査に基づく勤務・独立それぞれの年収を並べると、資格ごとの違いが明確になります。
| 資格 | 試験合格率 | 厚労省公称年収 | 勤務の実態年収 | 独立開業の実態 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士 | 41.20%(受験資格制限あり) | 約981万円 | 中央値 約687万円 | 所得平均1,022.3万円/中央値800万円 |
| 税理士 | 13.50%(科目別) | 約856.3万円 | 平均685万円(求人実態570万円) | 所得平均約871万円/中央値300万円以下 |
| 司法書士 | 5.21% | 765.3万円 | 中央値400万〜500万円 | 平均売上1,683.5万円/所得中央値450万〜600万円 |
| 社会保険労務士 | 5.50% | 489万円 | 平均409万円 | 平均売上1,657.9万円/中央値550万円 |
| 行政書士 | 14.54% | 591万円 | 400万〜450万円 | 売上500万円未満が78.0% |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和6・7年)」、各士業団体実態調査
表からわかるとおり、厚労省の公称年収と実態調査の勤務年収の間にはいずれも数百万円単位の差があります。特に税理士と行政書士は、独立開業した場合の所得・売上が公称値を大きく下回る傾向が顕著です。

弁護士・税理士・司法書士・社労士・行政書士それぞれの現実
弁護士:所得水準は高いが若手と地方で二極化
司法試験の合格率は41.20%(2025年実績)ですが、これは受験資格を法科大学院修了者または予備試験合格者に限定したうえでの数値です。全体の所得中央値800万円は他の士業を上回りますが、経験5年未満の若手層に限ると所得中央値は300万円に下がります。四大法律事務所であれば1年目から年収1,100万〜1,500万円が見込める一方、一般民事を扱う中小事務所では初年度300万〜500万円にとどまるなど、所属組織による格差が大きい業界です。
税理士:高齢化と二極化が進む「砂時計型」の所得構造
令和6年度(第74回)税理士試験の科目別全体合格率は13.5%です(出典:国税庁)。日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査報告書」によると、開業税理士の所得は300万円以下が26.0%を占める一方、1,000万円以上の層も約48%存在し、中間層が薄い分布になっています(出典:日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査報告書」)。
| 開業税理士の年間所得レンジ | 割合 |
|---|---|
| 300万円以下 | 26.0% |
| 300万〜500万円 | 16.9% |
| 500万〜700万円 | 12.6% |
| 700万〜1,000万円 | 15.5% |
| 1,000万円以上 | 約48% |
出典:日本税理士会連合会「第7回税理士実態調査報告書」
司法書士:登記独占の安定と勤務時の低賃金
令和7年度司法書士試験の合格率は5.20%と難関です。勤務司法書士の年収中央値は400万〜500万円で、初任給ベースでは300万〜400万円未満の層が21.0%と最多です。一方で独立開業した場合の平均売上は1,683.5万円まで伸びますが、営業力が伴わない開業者の約25%は年間所得200万円未満にとどまるとされています。
社会保険労務士:企業内の安定と開業のリスク
第57回社労士試験(2025年)の合格率は5.5%です。「社労士の雇用実態レポート2024」によると、企業内社労士の平均年収は656万円と比較的安定していますが、社労士事務所に所属する勤務社労士は409万円にとどまります(出典:社労士の雇用実態レポート2024)。全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書」では、開業社労士の売上平均は約1,658万円ですが中央値は550万円で、顧問先ゼロの開業者が全体の約1割存在するとされています(出典:全国社会保険労務士会連合会「社会保険労務士白書」)。
行政書士:8割が売上500万円未満という現実
2025年度行政書士試験の合格率は14.54%です。日本行政書士会連合会「実務実態調査」によると、年間売上高500万円未満の層が全体の78.0%を占めています(出典:日本行政書士会連合会「実務実態調査」)。勤務型の求人は月給20万円前後から始まり、年収の上限は500万〜600万円程度で頭打ちになる傾向があります。
独立開業は「青天井」か「二極化」か
独立開業の魅力は、会社員のような給与テーブルの上限がない点にあります。弁護士であれば渉外事務所のパートナーとして高額な役員報酬を得る道があり、税理士や社労士も複数の勤務士業を雇用して組織化することで、自身の労働時間を超えて売上を伸ばすことが可能です。
ただし、日本弁護士連合会のデータによれば、弁護士の所得は経験20年以上25年未満でピーク(平均1,692万円、中央値1,215万円)を迎えた後、経験35年以上では平均734万円、中央値459万円まで下降します(出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2023年版」)。加齢による体力的な受任制限や、顧問先企業の世代交代に伴う契約解除が背景にあるとされ、組織化に失敗した「一人親方」型の開業者は、年齢とともに所得が縮小するリスクを抱えます。

試験知識だけでは通用しない実務の現場
資格試験で学ぶ知識と、実務で求められるスキルには大きな距離があります。税理士業務の多くは、顧問先から届く整理されていない領収書を1枚ずつ仕訳する記帳代行が中心で、繁忙期には税務調査での否認リスクと向き合いながら膨大な数字を処理し続ける負荷がかかります。行政書士は戸籍謄本を代理取得できる「職務上請求書」を通し番号で厳格に管理する必要があり、紛失や不正使用が発覚すれば懲戒処分の対象になります。また建設業許可や飲食店営業許可の申請では、現地で壁の長さや天井の高さを実測して図面を作成するなど、法律知識以上に地道な現場対応力が求められます。社会保険労務士は助成金の申請代行において、顧問先の虚偽報告を見抜けなければ不正受給の連帯責任を問われる立場にあり、味方であると同時に審査役としての役割も担います。

まとめ
士業の「高年収」というイメージの多くは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のサンプリング対象や職種分類の粗さに起因する構造的な偏りを含んでいます。弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士のいずれも、公称値と勤務時・独立開業時の実態調査の数値には差があり、特に独立開業後の所得は個人の営業力や専門分野によって大きく変動します。資格取得を検討する際は、公称の平均年収だけでなく、勤務先の規模や開業後の集客体制まで含めて実態を確認することが重要です。年収の水準は個々の経験年数、専門分野、地域、経営努力によって大きく異なるため、この記事で示した数値はあくまで統計上の目安として捉えてください。
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よくある質問
士業の平均年収が高く見えるのはなぜですか?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」が常用労働者10人以上の事業所のみを対象としているため、個人事務所や零細事務所の低賃金層が統計から除外されやすく、平均値が高く出る構造になっています。
独立開業すれば年収は必ず上がりますか?
開業後の年収は個人差が大きく、税理士では開業所得300万円以下の層が26.0%、行政書士では売上500万円未満が78.0%という調査結果があり、必ず上がるとは言えません。
士業の年収は年齢とともにどう変化しますか?
日本弁護士連合会の調査では、弁護士の所得は経験20〜25年でピークを迎えた後、35年以上のベテラン層では大きく下降する傾向が示されており、加齢や顧問先の世代交代が影響するとされています。
次にやること
年収や合格率を把握したら、次は自分の場合の受験コストを具体化する段階です。
- 試験実施団体の公式サイトで、直近の試験日程と受験資格を確認する
- 科目免除の対象になるか(実務経験・他資格の保有)を調べる
- 独学と講座で必要な学習時間がどれだけ変わるか、複数社の資料で比較する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 1件。数値は各機関の公表時点のものです。
- 弁護士の年収は意外と低い?平均年収や年収アップのポイントを紹介! – MS-Japan(jmsc.co.jp)
- 弁護士の年収はいくら?経験年数別・勤務先別のリアルな年収データを公開 – 企業法務弁護士ナビ(houmu-pro.com)
- 税理士の年収は約884万円!なお現実は独立すると中央値300万円以下 | 税理士の転職日誌(a-agent.co.jp)
- 司法書士補助者の年収・給料は低い?残業はどのぐらい?リアルな勤務実態を解説(legal-job-board.com)
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- 令和 4 年賃金構造基本統計調査業種別主な職種早見表(mhlw.go.jp)
- 【公認会計士の年収】平均年収・中央値、年収アップの方法など – MS-Japan(jmsc.co.jp)
- 弁護士、行政書士、公認会計士、中小企業診断士など士業の平均年収 – LEC東京リーガルマインド(lec-jp.com)
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本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。
本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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