この記事の要点
- 行政書士の推計生存率は5年後80.4%、10年後64.7%で高水準です(出典:日本行政書士会連合会)。
- 税理士の推計生存率は5年後87.8%、10年後77.2%で、一般法人の5年81.7%と同水準です。
- 個人事業主全体の5年生存率25.6%と比べ、独占業務を持つ士業は廃業しにくい構造があります。
- 開業税理士の所得中央値は300万円以下、行政書士は売上500万円未満が78.7%を占めます。
- 生存率は高くても資格だけで高収入が決まるわけではなく、二極化が実態としてあります。
「独立して開業しても、税理士や行政書士は3年で9割が廃業する」——資格予備校のサイトやSNSでよく見かける言説です。しかし結論から言うと、この数字は公的統計のどこにも見当たりません。日本税理士会連合会や日本行政書士会連合会が公表している登録者数・登録抹消者数の実数から生存率を計算すると、行政書士の5年後の推計生存率は80.4%、税理士は87.8%に達し、中小企業庁「中小企業白書」が示す一般法人の5年生存率81.7%と同水準か、それを上回る結果になります。
一方で、生き残ることと収入面で成功することは別問題です。開業税理士の所得中央値は300万円以下、行政書士は年間売上500万円未満の層が78.7%を占めるというデータもあり、資格を取って看板を掲げるだけで高収入が約束されるわけではありません。この記事では、士業の独立開業について「生存率」と「所得の実態」という2つの軸を公的統計から整理します。個別の状況によって結果は変わり得る点はあらかじめお断りしておきます。

「3年で9割廃業」説はどこから来たのか
この手の噂の背景には、個人事業主全体の廃業率データがあります。中小企業白書によると、個人事業主の累積生存率は起業1年後で62.3%(廃業率37.7%)、3年後で37.6%〜47.6%(廃業率52.4%〜62.4%)、5年後には25.6%(廃業率74.4%)まで下がります。「起業して数年で大半が消える」というイメージは、この個人事業主全般のデータに由来していると考えられます。
しかし士業の一人事務所は税制上こそ個人事業主に分類されますが、業界としての性質はかなり異なります。業務を廃止する際には、無駄な会費支払いを避けるために登録抹消手続きを行う人がほとんどのため、各士業会が公表する年間登録抹消者数は、実態に近い「市場からの退出者数」とみなすことができます。この退出率をもとに、開業からn年後の累積生存率を S(n)=(1-r)^n という複利減衰モデルで推計したものが、後述する生存率カーブです。
資格ごとの合格率と収入の実態(比較表)
まず前提として、代表的な士業5資格について、試験の難易度と収入水準を比較します。数値は各士業会の実態調査や厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などに基づくものです。
| 資格名 | 試験合格率 | 標準学習時間 | 雇用型平均年収 | 開業型平均収入 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士 | 約30〜40% | 約3,000時間〜 | 約1,121.7万円 | 平均所得約1,106.4万円/平均収入2,558万円(所得中央値700万円) |
| 公認会計士 | 約10〜11% | 約3,000時間〜 | 約747万円(税理士含む) | 大手・コンサル提携等で年収1,000万円超が狙える水準 |
| 税理士 | 約15〜20%(5科目累積約2%) | 約3,000時間〜 | 約570万円 | 平均所得約871万円/平均売上2,329万円(所得中央値300万円以下) |
| 社会保険労務士 | 約6〜8% | 約1,000〜2,000時間 | 約500万円前後 | 開業全体平均約947万円(二極化が顕著) |
| 行政書士 | 約10〜12% | 約800〜1,000時間 | 約551万円 | 年間売上1,000万円以上が約9.5〜10%/500万円未満が78.7% |
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、組織に雇用されている「公認会計士・税理士」の平均年収は746万6,400円(毎月の給与47万6,800円、年間賞与177万4,800円)とされ、全労働者平均の496万5,700円を上回っています(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。

「平均値」と「中央値」はなぜこれほど違うのか
日本税理士会連合会の調査によれば、開業税理士の平均所得は約871万円、平均売上は2,329万円です(出典:日本税理士会連合会「税理士実態調査」)。一方で所得中央値は300万円以下にとどまり、この所得帯に全体の約3割が分布しているとされます。所得3,000万円超の層が7.7%、5,000万円超の層が2.5%存在する一方、多数派は300万円以下という、右に長く伸びた分布になっているためです。
行政書士ではこの二極化がさらに際立ちます。年間売上1,000万円以上を達成しているのは全体の9.5〜10%にすぎず、500万円未満の層が78.7%を占めています。売上から事務所家賃や通信費、旅費、会費といった必要経費を差し引いた実質所得を考えると、独立開業者の多くが「資格だけでは高収入に直結しない」という現実に直面していることになります。
弁護士についても、日弁連の調査では経験年数25年以上30年未満(50代中心)のピーク期に平均収入4,699万円(収入中央値3,000万円)、平均所得1,601万円(所得中央値1,100万円)に達するとされ、上限の高さと年次による差の大きさがうかがえます(出典:日本弁護士連合会)。
独立初期を圧迫する固定費と単価下落
顧客がゼロの状態でも、士業には登録維持のための年会費が発生します。地域や支部によって金額は異なりますが、公表資料からは次のような負担が確認できます。
| 資格 | 年会費等 | その他の初期費用 |
|---|---|---|
| 社会保険労務士(東京都開業登録) | 年会費96,000円+政治連盟会費7,200円=103,200円 | 登録免許税・登録手数料6万円、実務経験不足時は事務指定講習費7万7,000円 |
| 行政書士(東京都行政書士会・中野支部) | 年会費72,000円+政治連盟会費12,000円+支部会費6,000円=90,000円 | 電子証明書取得費(3年で約3万円)等 |
| 弁護士(多摩支部など特定支部) | 月額の基本会費負担が重い | 支部負担金(入会金)50万〜100万円に及ぶケースあり |
これに加えて、業務単価そのものの下落圧力もあります。税理士の法人決算報酬の分布を見ると、「20万円以下」が42.5%で最多、「10万円以下」も20.3%を占め、30万円以下の価格帯が全体の81%に達します。低単価のコンプライアンス業務中心では、件数をこなさなければ事務所運営が難しくなる構造があります。

実務は法律解釈より「泥臭い作業」が中心
独立後の実務は、法律を駆使してスマートに解決するイメージとは異なります。行政書士の高単価業務とされる開発許可申請や建設業許可申請では、都市計画法や建築基準法に適合させるため自治体の窓口担当者と何十回も調整を重ねる作業が中心になります。測量や建築、土木の知識が不足していると、手続きが数ヶ月単位で止まってしまうこともあります。
不動産関連業務では、接道状況や境界杭の位置を炎天下や寒さの中で確認する現地調査も欠かせません。過去の航空写真や埋蔵文化財マップを照合する地道な考証作業を怠ると、引き渡し後に地中埋設物が見つかり、損害賠償リスクにつながる可能性もあります。加えて、独立1年目は異業種交流会への参加や他士業への紹介依頼など、地道な営業活動が実質的な主業務になるケースが多いとされています。

統計を読み違えやすい3つのポイント
公表されている統計は、字面だけを見ると実態と異なる印象を与えることがあります。
1つ目は税理士の年間登録抹消者数です。令和6年度の抹消事由は「業務廃止」が1,350人(64.81%)、「死亡」が717人(34.42%)で、両者合計でほぼ全体を占めます。税理士会員の年齢構成は50代21.5%、60代25.7%、70代22%と、60代以上が53.6%に達しており、抹消の多くは競争敗北ではなく高齢化に伴う引退や死亡によるものと考えられます(出典:日本税理士会連合会)。
2つ目は「開業税理士の所得300万円以下が3割」という数字です。この調査の母集団には、企業でパート・アルバイト勤務をしながら名義上のみ開業登録している層や、家事・育児が中心で実質的に休業状態にある層、年金受給者で最低限の業務のみ受託する高齢層も含まれています。全力で顧客開拓を行っている層に絞った場合の実態は、この数字だけからは判断しきれません。
3つ目は行政書士の「公務員特例ルート」です。令和4年度は、公務員としての行政事務経験により無試験で登録した新規登録者が376人だったのに対し、同ルート出身者とみられる登録抹消者は廃業届362人、死亡74人の合計436人で、入る人数より出る人数の方が多い純減状態にあります。一方、試験合格による登録者数は増加を続けており、同じ資格の中でもルートによって動向が異なります。

公的統計から生存率を推計する
士業の独立開業だけを追跡した公的な縦断統計は存在しないため、各士業会が公表する期首登録者数と年度中抹消者数から単年度廃業率rを算出し、S(n)=(1-r)^n という複利減衰モデルで累積生存率を推計します。
行政書士は令和6年度、期首登録者数51,619人に対し登録抹消者数2,183人で、単年度廃業率r=4.23%となります。税理士は令和6年度末の登録者数81,696人に対し登録抹消者数2,083人で、r=2.55%です。この値をモデルに当てはめると、次のような推計生存率カーブになります。
| 経過年数 | 行政書士(推計) | 税理士(推計) | 一般法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|---|---|
| 3年後 | 87.8% | 92.5% | 88.1% | 37.6〜47.6% |
| 5年後 | 80.4% | 87.8% | 81.7% | 25.6% |
| 10年後 | 64.7% | 77.2% | ー | ー |
税理士について、死亡による抹消を除いた純粋な経済的要因のみの単年度廃業率はr≈1.65%まで下がり、この場合の10年後推計生存率は約84.6%になります。行政書士も令和5年度データ(登録者51,619人、廃業者2,368人、r≈4.4%)で試算した10年後生存率63.5%とおおむね近い値が得られ、推計としての一貫性がうかがえます。

なぜ士業は廃業しにくいのか
士業の独立事務所が個人事業主全般より高い生存率を示す背景には、いくつかの構造的な特徴があります。物理的な商品を扱わないため在庫リスクや仕入資金のショートが生じにくいこと、自宅を事務所にでき初期投資を抑えられること、そして資格保有者以外は業務を行えないという独占業務の枠組みが、外部からの価格競争にさらされにくくしていることです。これらが、売上が落ち込んだ局面でも事務所の存続を支える要因になっていると考えられます。
一方で、この「生存しやすさ」がそのまま「高収入」を意味するわけではありません。手堅く生き残ってはいるものの、会社員時代より労働条件が悪化した状態にとどまる層が一定数存在することは、税理士の所得中央値や行政書士の売上分布からも読み取れます。

まとめ
公的統計を確認する限り、「士業は独立して3年で9割が廃業する」という言説には根拠が見当たりません。行政書士・税理士とも登録者数と抹消者数から推計される生存率は、一般法人と同水準かそれ以上であり、個人事業主全体の生存率と比べても高い水準にあります。
ただし、生存率の高さと所得水準の高さは別の指標です。開業税理士の所得中央値は300万円以下、行政書士の約8割が年間売上500万円未満というデータは、資格取得と独立開業がそのまま高収入を保証するものではないことを示しています。独立を検討する際は、生存率の高さだけでなく、単発業務への依存度や固定費、顧問契約などの継続収入の見込みといった、収入構造そのものを具体的に確認することが欠かせません。数字の解釈は個々の状況によって異なるため、自身の専門分野や地域の実情に照らして判断することが望まれます。
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よくある質問
士業が独立して開業すると、本当に3年で9割が廃業するのですか?
公的統計にはそのような数字はありません。登録者数と抹消者数から推計すると、行政書士の3年後生存率は87.8%、税理士は92.5%で、9割廃業という数字は確認できません。
税理士の登録抹消者数が年間2,000人を超えているのはなぜですか?
令和6年度の抹消事由は業務廃止が64.81%、死亡が34.42%を占めます。会員の53.6%が60代以上という高齢化構造があり、抹消の多くは引退や自然死によるものと考えられます。
開業税理士や行政書士は生存できても収入は低いのですか?
開業税理士の所得中央値は300万円以下、行政書士は年間売上500万円未満が78.7%を占めます。生存率は高くても、所得が伸び悩む層が一定数存在するのが実態です。
なぜ士業は他の個人事業主より廃業しにくいのですか?
在庫や仕入資金のリスクが少なく、自宅開業で固定費を抑えられ、資格保有者以外は業務を行えない独占業務の枠組みがあるためと考えられます。
次にやること
年収や合格率を把握したら、次は自分の場合の受験コストを具体化する段階です。
- 試験実施団体の公式サイトで、直近の試験日程と受験資格を確認する
- 科目免除の対象になるか(実務経験・他資格の保有)を調べる
- 独学と講座で必要な学習時間がどれだけ変わるか、複数社の資料で比較する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 3件。数値は各機関の公表時点のものです。
- 士業と呼ばれる15資格一覧 8士業・10士業の想定年収も公開 – 伊藤塾コラム(column.itojuku.co.jp)
- 弁護士の年収を徹底解説|平均年収や中央値・現実的な年収を事務所規模や勤務形態・年齢別で比較【2025年】 | NO-LIMIT(ノーリミット)(no-limit.careers)
- 【2025年最新版】税理士と公認会計士の年収っていくら?年収アップの方法やポイントも解説!(viscas-jinzai.com)
- 会計士がいきなり独立するのは難しい?後悔しないための準備と対策(l-c-style.co.jp)
- 税理士の年収は約884万円!なお現実は独立すると中央値300万円以下 | 税理士の転職日誌(a-agent.co.jp)
- 社労士(社会保険労務士)とは?仕事内容や年収、試験難易度などを徹底解説! – MS-Japan(jmsc.co.jp)
- 【徹底検証】士業の年収は1000万円に届くのか?8士業・10士業の平均年収ランキングと現実を解説 – Honors(honors.jp)
- 行政書士が年商1000万円を生み出す法則【売上の公式の行政書士版を解説します】(gyouseisyosi-kaigyou.net)
- 行政書士の年収1000万【年間売上はいくらあればいいのか?】(kaigyo-guide.com)
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- 社労士の登録料・入会費・年会費は高い!資格登録・維持のメリットとは? – スタディング(studying.jp)
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- 171 行政書士資格取得後 【登録をするかどうか】編 – note(note.com)
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- 2023年版「中小企業白書」 第2節 起業・創業(chusho.meti.go.jp)
- 5.全国の税理士の人数と税理士資格を取得した方法・税理士試験受験者と合格者の推移(satousigeru.jp)
- 【2019年版】プロが税理士業界の現状と今後を徹底解説(ease-keiri.com)
- 弁護士、行政書士、公認会計士、中小企業診断士など士業の平均年収 – LEC東京リーガルマインド(lec-jp.com)
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本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。
本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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