この記事の要点
- ビル施設管理員の平均年収は約408万円、40代前半では約397万円で頭打ちになる(出典:厚生労働省)
- 電験三種取得後の電気主任技術者の平均年収は約644.5万円、電験二種含む全般では約703.9万円
- 2025年度上期の全科目合格率は12.9%まで低下したが、科目留保制度で3年6回の受験機会がある
- 外部委託を担う技術者は66歳以上が約60〜63%を占め、40代は実務市場で若手層にあたる
- 独立後は33点満床で年収800万〜1,000万円が視野に入るが、営業と初期費用の負担も大きい
「ビルメン上がりの最終兵器」と呼ばれる電験三種は、40代からの未経験者にとって本当にキャリアを変える資格なのでしょうか。結論から言えば、公的統計を見る限り、ビル施設管理の現場に留まった場合の年収と、電験三種を取得して電気主任技術者として働いた場合の年収には、明確な差が存在します。ただし、その差を実際に得るまでには、実務経験の蓄積や資格取得の努力といった前提条件があり、資格を取れば自動的に高年収が保証されるわけではありません。
この記事では、厚生労働省の統計データや試験実施機関の公表資料をもとに、ビルメン業界の賃金構造、電験三種取得による年収の変化、試験の難易度推移、そして独立という選択肢の現実的なメリットとリスクを整理します。数字の根拠を一つひとつ確認しながら読み進めてください。
ビルメン業界の賃金構造と電験三種による年収の違い
ビルメンテナンス業界では、元請から下請、孫請へと業務が委託される多重下請け構造が常態化しており、末端で働く従業員の給与水準が抑制されやすいという課題があります。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、ビルメン業界の基盤職種である「ビル施設管理員」の平均年収は約408万円にとどまります(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。
これに対し、電験三種を取得して電気主任技術者として保安業務を担う場合、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」(令和5年賃金構造基本統計調査ベース)では平均年収が約644.5万円と算出されています(出典:厚生労働省「job tag」)。電験二種保持者を含む電気技術者全般では約703.9万円まで上がるというデータもあります。参考として、国税庁「民間給与実態統計調査」等に基づく一般的な有職者の平均給与は約458万円とされており、電気主任技術者の水準はこれを上回ります。
| 職種・有資格区分 | 平均年収(目安) | データの出典・特徴 |
|---|---|---|
| 電気技術者(電気主任技術者) | 約644.5万円 | 厚生労働省「job tag」:電気関連職種のトップ水準 |
| 電気技術者(電験二種保持者含む全般) | 約703.9万円 | 賃金構造基本統計調査に基づく職種分類 |
| 電気工事士 | 約506.8万円〜547.6万円 | 厚生労働省「job tag」:電気主任技術者の監督下で施工 |
| ビル施設管理員(全年齢平均) | 約408万円 | 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 |
| ビル・建物清掃員 | 約258.8万円(月額21.59万円ベースの簡易算出) | 令和5年賃金構造基本統計調査 |
さらに、ビル施設管理員の年齢別・役職別の水準を見ると、経験を重ねて管理職に昇進しなければ昇給の幅が限定的であることがわかります。20代前半では約244.2万円、40代前半では約397万円で頭打ちとなり、50代前半でも約420万円が定年前のピーク水準です。係長クラスで約507万円、課長クラスで約662万円、部長クラスでは約799万円まで上がりますが、部長職のポストは極めて限られています(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。この頭打ち構造が、電験三種取得を目指す動機の背景にあります。

試験制度改革でチャンスは広がったのか|合格率の推移
電験三種は歴史的に「一発合格が困難な難関資格」とされてきましたが、電気保安人材の不足を背景に、2022年度(令和4年度)から年1回実施から年2回実施へと変更され、CBT(Computer Based Testing)方式も導入されました。この制度改革によって、受験の機会そのものは増えています。
| 試験実施年度・期 | 受験者数(人) | 全科目合格者数(人) | 全科目合格率 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 41,543 | 3,879 | 9.3% |
| 2021年度 | 37,765 | 4,357 | 11.5% |
| 2022年度 上期 | 33,786 | 2,793 | 8.3% |
| 2022年度 下期 | 28,785 | 4,514 | 15.7% |
| 2023年度 上期 | 28,168 | 4,683 | 16.6% |
| 2023年度 下期 | 24,567 | 5,211 | 21.2% |
| 2024年度 上期 | 25,416 | 4,064 | 15.9% |
| 2024年度 下期 | 24,547 | 4,117 | 16.8% |
| 2025年度 上期 | 24,766 | 3,201 | 12.9% |
| 2025年度 下期 | 24,176 | 3,164 | 13.1% |
2023年度下期に21.2%まで上昇した合格率は、2025年度上期には12.9%まで低下しており、CBT導入後では最低の水準となりました(出典:一般財団法人電気技術者試験センター)。一回の試験だけを見ると難易度は安定していないと言えます。
ただし、電験三種には「科目留保制度」があり、3年以内に4科目すべてに合格すれば全科目合格として扱われます。年2回実施であれば3年間で最大6回の受験機会があるため、一回ごとの合格率の変動に一喜一憂せず、科目ごとに合格を積み重ねていく戦略が取れる点は、記憶力や学習時間の確保に不安がある40代の受験者にとって現実的な選択肢になり得ます。

なぜ需要が尽きないのか|法律が生み出す外部委託の仕組み
電験三種の需要が尽きないと言われる背景には、電気事業法による強い規制があります。電気事業法第43条は、600ボルトを超える高圧電力を受電する事業用電気工作物を設置する事業者に対し、電気主任技術者の選任を義務付けています。
一方で、中小規模のビルや店舗が専任の技術者を直接雇用するのは現実的ではないケースも多く、電気事業法施行規則第52条第2項に基づく「保安管理業務外部委託承認制度」により、外部の電気管理技術者や電気保安法人へ業務を委託することが認められています。この二つの規定が組み合わさることで、高圧受電設備を持つ事業者は必ず有資格者との契約を必要とする構造になっています。
興味深いのは、電験三種の合格者すべてが保安業界に流入するわけではないという点です。合格者の多くは、大手電力会社やプラント、鉄道会社などですでに働いている技術者が社内昇進や資格維持のために受験しており、保安系(ビルメン・保安協会・保安法人)へ新規に就職・転職する割合は毎年2%程度にとどまるとされています。これにより、求職市場で動く電験三種保有者の数は世間で語られる合格者数よりも少なく、採用市場は技術者側にとって有利な構造になりやすいと考えられます。

40代が「若手」になる理由|技術者の高齢化データ
外部委託の実務を支える電気管理技術者の年齢構成は、極端な高齢化が進んでいます。経済産業省の調査および全国電気管理技術者協会連合会の加盟会員データによると、66歳以上が全体の約60〜63%を占めており、内訳では71〜75歳が約23%、76歳以上が約22%に達しています。一方で50代以下は15%未満にとどまります。
| 外部委託従事者の年齢構成 | 割合(目安) |
|---|---|
| 50代以下 | 約15%未満 |
| 60代前半 | 約20〜25% |
| 66歳以上全体 | 約60〜63% |
| 71歳〜75歳 | 約23% |
| 76歳以上 | 約22% |
この年齢構成の中では、40代は実務市場において若い即戦力候補として扱われる位置づけになります。再生可能エネルギー設備やEVインフラの拡大により保安管理が必要な設備件数が増加する一方、高齢技術者の引退が今後見込まれることから、需給のギャップが生じやすい状況にあると言えます。ただし、この需給環境が将来にわたって変わらないと断定できるものではなく、制度や市場環境の変化によって状況は変わり得る点には留意が必要です。

独立という選択肢|収入の可能性とリスク
電験三種取得後のキャリアの一つに、電気管理技術者としての独立があります。外部委託では、1人の技術者が担当できる設備容量や物件数が「持ち点(換算係数の合計)33点」として定められています。仮に1点あたりの契約単価を20,000円〜25,000円とし、33点の枠を満床にできれば、月額66万円〜82.5万円、年収換算で約800万〜1,000万円のストック収入が見込めるとされています。電気保安法人として組織化し従業員を増やせば、年収1,200万〜2,000万円という水準を目指すロードマップも語られています。
ただし、独立には相応のリスクも伴います。既存のビルや工場の多くはすでに地元の電気保安協会や既存の電気管理技術者と長期契約を結んでいるため、新規の営業活動で契約を獲得するのは容易ではありません。また、絶縁抵抗計や継電器試験装置などの測定器一式と移動用車両を揃えるために200万〜300万円規模の初期費用が必要になります。さらに、独立後は組織のバックアップがない中で24時間365日の緊急対応が求められ、点検ミスなどにより波及事故を起こした場合には、数千万円規模の損害賠償責任を個人で負う可能性があります。これらの点は、独立を検討する際に必ず織り込んでおくべき現実です。

資格取得後に待つ実務の現実
電気主任技術者の実務の中でも負荷が高いのが、年に1回、施設全体を停電させて行う「年次点検」です。設置者への聞き取りから始まり、高圧遮断器を開放して施設を停電させ、キュービクル内部の清掃、リレー試験などの各種試験、そして復電時の接地器具の外し忘れがないかの確認まで、複数の工程を経て進められます。清掃を怠るとトラッキング火災の原因になり、復電時の確認が不十分だと波及事故につながるリスクがあるため、慎重な作業が求められます。
また、40代未経験者が実務経験を積む段階では、多くの場合ビル管理会社で「ビル施設管理員」として勤務することになります。午前9時から翌朝午前9時までの24時間宿直勤務が基本となり、電気設備の管理だけでなく、水漏れや空調の不具合といった設備トラブル全般への対応も担うことになります。実務経歴証明書に会社の承認を得られるまでの期間、こうした勤務形態が続く点は、資格取得を検討する上で理解しておく必要があります。
独立後については、技術面よりも請求書発行や入金確認、帳簿記帳、確定申告といった経理・事務作業の負担が大きいという声も見られます。技術職としての経験が長い人ほど、こうした非技術業務に不慣れな傾向があるとされています。

実務経験の壁は短縮できるのか|公的な仕組み
電気管理技術者として独立するには、一定の実務経験が求められますが、経済産業省はこの要件を短縮する仕組みを設けています。従来は5年の実務経験が必要とされていましたが、「保安管理業務講習」を受講することで3年に短縮され、さらに75時間の実技訓練を含む「拡充版講習(保安管理業務訓練)」を修了することで2年まで短縮が可能とされています。加えて、300kVA以下の小規模なキュービクル等に限定した条件付きの受託であれば、最短約1年の実務経験と研修修了により外部委託の承認を得られる仕組みもあります。
| 実務経験ルート | 必要な実務経験期間 |
|---|---|
| 従来ルート | 5年 |
| 保安管理業務講習受講 | 3年 |
| 拡充版講習(75時間の実技訓練)修了 | 2年 |
| 条件付き受託(300kVA以下限定) | 最短約1年 |
これらの制度を活用すれば、40代から資格取得と実務経験を積み、50代に入る前に独立を目指すルートを描くことも可能になります。もっとも、実務経験の短縮は制度上の要件緩和であり、営業力や事務処理能力といった独立後に必要なスキルまでを補ってくれるものではない点には注意が必要です。
まとめ
公的統計を見る限り、ビル施設管理員の平均年収約408万円に対し、電験三種取得後の電気主任技術者は約644.5万円と、明確な年収差が存在します。試験制度の年2回化と科目留保制度により、計画的な受験であれば40代からでも合格を目指しやすくなっている一方、直近の合格率は12.9%まで低下しており、簡単な資格でないことも事実です。
電気事業法に基づく選任義務と外部委託制度により保安人材の需要は一定程度見込まれ、技術者の高齢化を踏まえれば40代は実務市場で若手として扱われやすい立場にあります。ただし、独立には営業活動の難しさや初期費用、緊急対応の責任といった負担が伴い、実務経験の短縮制度も万能ではありません。資格取得から独立までの道のりは、個々の状況や努力によって結果が大きく変わり得るものであり、年収や成功が保証されるものではない点を踏まえた上で、自身のキャリアプランを検討することが大切です。
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よくある質問
電験三種は40代未経験からでも本当に取得できますか?
年2回実施とCBT方式の導入、科目留保制度により、3年間で最大6回の受験機会があります。ただし2025年度上期の合格率は12.9%であり、計画的な学習が前提となります。
電験三種を取得すれば年収は必ず上がりますか?
統計上、ビル施設管理員の平均年収約408万円に対し電気主任技術者は約644.5万円という差はありますが、実務経験や勤務先、独立の有無によって結果は個人差が大きく、一律の上昇を保証するものではありません。
電気管理技術者として独立するにはどのくらいの実務経験が必要ですか?
従来は5年が必要ですが、保安管理業務講習の受講で3年、拡充版講習の修了で2年、条件付き受託であれば最短約1年まで短縮できる制度があります。
独立後の収入はどのくらい見込めますか?
持ち点33点を満床にした場合、年収換算で約800万〜1,000万円が一つの目安とされていますが、営業による契約獲得や初期費用の負担次第で実際の収入は変動します。
次にやること
年収や合格率を把握したら、次は自分の場合の受験コストを具体化する段階です。
- 試験実施団体の公式サイトで、直近の試験日程と受験資格を確認する
- 科目免除の対象になるか(実務経験・他資格の保有)を調べる
- 独学と講座で必要な学習時間がどれだけ変わるか、複数社の資料で比較する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 8件。数値は各機関の公表時点のものです。
- hw-jobs.careermine.jp
- ビル施設管理の年収・給与 – らくらく求人検索(hw-jobs.careermine.jp)
- ビルメン業界の給料事情分析|採用担当者向けに報酬戦略を解説(naito.jp)
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本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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