この記事の要点
- 2015年予測で税理士92.5%・行政書士93.1%とされた代替確率だが、実際は10年で登録者数が増加した
- 税理士・公認会計士の平均年収は経験0年で約401万円、15年以上で約1,056万円まで上がる
- 司法試験の合格率41.2%は、予備試験の通過率3.64%という難関を突破した後の数字である
- 税理士には試験を受けずに登録できる国税OBルートがあり、23年以上の勤務と研修が条件となる
- 独立開業の年収は個人差が大きく、紹介ルートの枯渇や価格競争という課題も抱えている
「士業の9割はAIに代替される」という2015年の予測は、10年が経った現在、当たっていない。むしろ代替確率が90%を超えるとされた税理士や行政書士ほど、登録者数はこの10年でむしろ増加している。AIが奪ったのは職業そのものではなく、記帳や申請書類の作成といった定型業務だった。
この記事では、2015年の予測と直近の登録者数の推移、難関資格の合格率と公的統計に基づく年収、そしてAIに代替されにくいとされる現場の実務までを、公的な調査データをもとに整理する。資格取得を検討している人にとって、代替確率や合格率という数字だけでは見えてこない実態を知る手がかりになれば幸いである。
なお、年収やキャリアの実態は勤務先の規模や個人の営業力によって大きく異なる。以下で示す数値はあくまで公的統計上の平均的な傾向であり、個々のケースに当てはまるとは限らない点に留意してほしい。
「士業の9割がAIに代替される」予測は的中したのか
2015年12月、野村総合研究所と英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授らによる共同研究が発表され、「10〜20年後に日本の労働人口の約49%が人工知能(AI)やロボット等で代替可能になる」という試算が社会に大きな衝撃を与えた(出典:野村総合研究所、オックスフォード大学)。
この試算では、税理士は92.5%、行政書士は93.1%という高い代替確率が示され、「データの分析や秩序的・体系的な操作が中心となるためAI化が容易である」と結論づけられた。一方で弁護士の代替確率は1.4%と、同じ士業でも予測には大きな開きがあった。この結果が「士業=AIに消される職業」という強いイメージを社会に広めることになった。

代替確率が高いほど登録者数が増えた10年間の実態
実際に10年が経過した時点でのデータを見ると、予測とは逆の傾向が確認できる。代替確率が高いとされた士業ほど、登録者数はむしろ着実に増加しているのである。
| 士業 | 2015年予測 代替確率 | 2026年再見積もり(タスク代替比率) | 2015年前後の登録者数 | 2025年前後の登録者数 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士 | 1.4% | 10%〜25% | 35,045人 | 47,103人 |
| 公認会計士 | 85.9% | 25%〜40% | 36,302人 | 43,731人 |
| 税理士 | 92.5% | 35%〜55% | 75,643人 | 81,696人 |
| 司法書士 | 78.0% | 20%〜40% | 21,658人 | 23,387人 |
| 社会保険労務士 | 79.7% | 25%〜45% | 40,110人 | 47,923人 |
| 行政書士 | 93.1% | 40%〜60% | 45,441人 | 54,261人 |
代替確率92.5%とされた税理士は75,643人から81,696人へ、93.1%とされた行政書士は45,441人から54,261人へと、いずれも増加している。2026年時点での再見積もりでは、代替確率は「職業全体」ではなく「タスクの一部」に対する比率として捉え直されており、いずれの士業も20〜60%程度のレンジに収まっている。

なぜ予測は外れたのか AIは「駆逐者」ではなく「拡張ツール」
背景にあるのは、AI-OCRによる記帳自動化、生成AIによる契約書の初期レビュー、e-Gov等のAPI連携による行政手続きの電子化といった、定型業務の自動化である。これにより士業1人あたりが処理できる案件数は増え、キャパシティが拡大した。
同時に、法改正の多頻度化やビジネスモデルの多様化によって、法解釈のグレーゾーンや相談内容は複雑化している。つまりAIによって単純作業から解放された分、より高度な相談・コンサルティング業務へとリソースを振り向けられるようになったことが、登録者数の増加とキャパシティ拡大を支えている。AIは士業を駆逐したのではなく、単純作業を肩代わりする「外骨格」として機能してきたといえる。
難関資格の合格率と、公的統計が示すリアルな年収
資格を取得すれば高収入が約束されるというイメージも、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をはじめとする公的統計を見ると、実際にはより複雑な構造になっていることがわかる(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。
| 士業 | 受験者数(直近) | 合格率(直近) | 平均年収(公的統計) |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 3,837人 | 41.2%(司法試験単体) | 約970万〜1,000万円超 |
| 公認会計士 | 非公表 | 約10%〜15% | 約856.2万円 |
| 税理士 | 36,320人 | 21.6%(科目合格率) | 約856.2万円 |
| 社会保険労務士 | 43,421人 | 5.5% | 約591万〜947万円 |
| 司法書士 | 14,418人 | 5.2% | 約591万〜970万円 |
| 行政書士 | 50,163人 | 14.54% | 約551万〜591万円 |
ここで見落とされがちなのが、「勤務士業」と「独立開業士業」が平均値に混在している点である。税理士・公認会計士の場合、経験0年の平均年収は約401万円にすぎないが、15年以上の実務経験を積むと約1,056万円まで上昇する。大手監査法人や税理士法人ではパートナー職まで進めば数千万円規模の報酬になる一方、独立開業した個人税理士事務所の平均売上高は約3,328万円であり、経費を差し引いた実質所得の目安とされる。独立開業の収入は本人の営業力に左右される部分が大きく、勤務士業とは異なるリスクとリターンの構造を持つ。

「無試験で資格取得」という知られざるルート
税理士試験は簿記論や財務諸表論など5科目の合格が必要で、5科目すべてに到達する受験者は全体のわずか2%程度とされる超難関試験である。しかし、日本の税理士がすべてこの試験を突破した「試験合格組」というわけではない。
税務署や国税局などの税務官公署に通算10〜15年以上勤務すると税法科目の試験が免除され、23年以上勤務した上で指定の研修を修了すると会計科目を含む全科目が免除される「国税OBルート」が存在する。この制度により、一度も税理士試験を受けずに登録する道が用意されている。また、公認会計士や弁護士の資格を持つ者は、税理士試験を受けることなく税理士会に登録するだけで税理士業務を行うことができる。
もうひとつ誤解されやすいのが司法試験の合格率である。直近の司法試験合格率は41.2%で、一見すると行政書士(14.54%)や社会保険労務士(5.5%)より易しく見える。しかし司法試験を受けるには、法科大学院修了者を除けば、最終合格率わずか3.64%(12,432人中452人)という予備試験を突破しなければならない。予備試験を通過した層の司法試験合格率は90.68%に達するが、これは既に選抜を勝ち抜いた精鋭同士の争いだからであり、41.2%という数字だけを他の資格と横並びで比較することはできない。

AIに代替されにくいのはどんな業務か
各士業の現場では、AI-OCRや自動仕訳、申請書類のドラフト生成といったデータ処理をAIが担う一方で、その先に残る業務は極めて人間的である。
税理士の現場では、靴箱や紙袋に詰め込まれた「しわくちゃの領収書」を一つずつ確認して分類する作業や、経営者の資金繰りの不安や家族関係の相談に応じる「カウンセリング」的な役割が日常的に発生する。司法書士は、数十億円規模の不動産取引において、病院のベッドで軽度の認知症を患う高齢者と直接面会し、本人の自発的な売却の意思を確認する。親族が「本人は承諾している」と主張しても、意思確認ができなければ職権で取引を止めなければならず、判断を誤れば巨額の損害賠償リスクを負う。
行政書士は、飲食店や深夜営業の許可申請でメジャーを持って店舗の面積をミリ単位で実測し、自治体ごとに異なる明文化されていない「ローカルルール」を役所の窓口と下交渉する。社会保険労務士は、就業規則のドラフト自体は自動化が進んでも、メンタル不調者への対応やハラスメント告発のヒアリング、解雇をめぐる労使の感情対立を調停する役割を担う。こうした物理的な現場対応や、感情のぶつかり合いへの介入、最終的な判断の引き受けは、いずれもAIが代替しにくい領域として残っている。

独立開業かインハウスか キャリア選択の分岐点
資格取得後のキャリアは、大きく「独立開業」と「企業に雇用される勤務士業(インハウス)」に分かれる。独立開業は努力次第で報酬の上限が広がる自由があるが、新規顧客の獲得という高い壁に直面する。司法書士であれば従来の紹介ルートだった地元の不動産業者や金融機関とのパイプは既存のベテラン事務所に押さえられており、新規開業者はSEOやMEO、ネット広告といったWeb集客への先行投資を迫られる。税理士も顧問先ゼロからのスタートでは、開業初期の1〜2年が赤字や低所得にとどまるリスクがある。
さらに、クラウドサービスや行政の電子化によって「定型的な書類作成」の相場が下がり、差別化できない開業士業は相見積もりや顧問料の値下げ圧力にさらされやすい。
一方、企業に雇用される働き方としては、法律事務所を持たず一般企業に勤める「インハウスローヤー」のような形態が増えている。年収の上限は所属企業の給与テーブルに準じるため独立開業ほどの青天井にはなりにくいが、安定した月給と、顧客獲得の営業活動から解放される働き方が特徴で、大手企業や外資系企業では30代で年収1,000万円前後に到達する例もあるとされる。どちらが向いているかは、収入の変動をどこまで許容できるか、営業や交渉が得意かどうかといった個人の状況によって変わる。

まとめ
2015年に示された「士業の9割がAIに代替される」という予測は、10年が経った現在、職業の消滅という形では実現していない。実際には代替確率が高いとされた税理士や行政書士ほど登録者数が増え、AIは定型業務を肩代わりする形で士業の役割を再編してきた。
合格率や代替確率といった数字だけを見ると資格の価値を見誤りやすいが、公的統計が示す年収は経験年数や勤務先の規模、独立開業か勤務かによって大きな幅がある。また、意思確認や巨額リスクの引き受け、現場での実測や交渉、感情面での対応といった業務は、これまでのところAIに置き換わっていない。資格取得を検討する際は、代替確率や合格率の数字だけでなく、AIに代替されにくい業務にどう関わっていくかという視点も踏まえて判断することが望ましい。
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よくある質問
AIが普及すると士業の資格を取る意味はなくなりますか?
公的統計を見る限り、代替確率が高いとされた税理士や行政書士でも登録者数は増加しており、資格そのものが不要になったとは言えません。ただしAIに代替されやすい定型業務中心の働き方は、今後も影響を受けやすいと考えられます。
税理士試験に合格しなくても税理士になれるのですか?
税務署などに通算10〜15年以上勤務すると税法科目が免除され、23年以上勤務し指定研修を修了すると全科目が免除される制度があります。公認会計士や弁護士も試験なしで税理士登録が可能です。
独立開業と企業に雇われて働くのでは、どちらが年収は高いですか?
独立開業は努力次第で報酬が伸びる可能性がありますが、初期の顧客獲得コストや収入の振れ幅が大きい傾向があります。企業に雇用される場合は安定した年収が得られやすい一方、上限は企業の給与テーブルに準じます。
司法試験の合格率41.2%は簡単ということですか?
予備試験の最終合格率はわずか3.64%で、12,432人が受験して452人しか合格していません。この難関を突破した人だけが司法試験に臨むため、41.2%という数字だけで難易度を判断することはできません。
次にやること
年収や合格率を把握したら、次は自分の場合の受験コストを具体化する段階です。
- 試験実施団体の公式サイトで、直近の試験日程と受験資格を確認する
- 科目免除の対象になるか(実務経験・他資格の保有)を調べる
- 独学と講座で必要な学習時間がどれだけ変わるか、複数社の資料で比較する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 4件。数値は各機関の公表時点のものです。
- 知識の進化論: 生成AIと2030年の生産性(nri.com)
- 人工知能(AI)と弁理士業務(jpaa.or.jp)
- 【第1回】2015年の「AI代替予測」から10年。主要8士業の生存確率を2026年現在でフェアに再見積もりする|小笠原 裕 | 経営とITの羅針盤 – note(note.com)
- AIによる代替可能性90%以上の士業は3つの士業 – 生き残りには2つの道 – ネクストフェイズ(npc.bz)
- 2り取りしつつ登録までを企業を設立。 AIを用 代理するが、仕事がAI に置き換えられかねない との危機感は強い。 – 司法書士法人星野合同事務所(hgo.jp)
- 税理士の平均年収はいくら?中央値やケース別の年収・高収入を狙う方法を解説 – freee(freee.co.jp)
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本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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