転職エージェントの手数料は35%?実績24.3%と法改正を解説

転職エージェントの手数料は35%?実績24.3%と法改正を解説 転職・はたらき方

世間では「転職エージェントを使うと年収の35%が手数料として引かれる」としばしば語られますが、この数字は正確ではありません。厚生労働省が令和7年12月25日に公表した「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」によると、全職種平均の手数料率実績は24.3%です(出典:厚生労働省「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」)。35%という数字は、採用競争の激しい一部職種における相場に近く、全体像を表す数字ではありません。

転職エージェントは求職者にとって無料のサービスですが、その裏では求人企業からエージェントへ、決定者の想定年収に応じた手数料が支払われています。厚生労働省の「職業紹介事業報告書」の集計によれば、令和6年度の常用就職1件あたりの平均手数料は約103万円に達しました(出典:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果」)。この記事では、公的統計をもとに手数料の実態と算定のしくみ、そして令和7年4月に施行された職業安定法改正が転職市場にもたらす変化を整理します。

転職エージェントの手数料相場「35%」は本当か

職業紹介事業者が求人企業から徴収する手数料は「届出制手数料」と呼ばれる方式が主流で、厚生労働大臣に事前届出した料率の範囲内で自由に設定できます。実務上の上限はおおむね50%とされており、ハイクラス職や採用難易度の高い職種では30%台後半の料率が設定されることもあります。しかし、これはあくまで一部のケースです。

厚生労働省が「人材サービス総合サイト」の実績集計をもとに公表した職種別の平均手数料率実績と、就職後6か月以内の離職率は次のとおりです。

取扱職種 平均手数料率実績 就職後6か月以内の離職率
法人・団体管理職員 34.6% 4.9%
保育士 33.9% 12.2%
情報処理・通信技術者(開発) 31.2% 2.9%
介護専門職 31.2% 15.3%
一般事務・秘書・受付 30.0% 4.4%
看護師・准看護師 24.1% 10.5%
全職種(平均) 24.3% 7.9%
営業の職業 21.6% 5.4%
医師 20.2% 3.0%

(出典:厚生労働省「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」)

法人・団体管理職員(34.6%)やITエンジニア(31.2%)で料率実績が高いのは、採用競争が激しくエージェント側の探索コストが大きいためと考えられます。一方、医師(20.2%)や看護師(24.1%)は決定単価そのものが高いため、料率としては20%台に収まる傾向があります。「一律35%」という理解と、24.3%という実績平均のあいだにはギャップがあることが、公的データから読み取れます。

開示される真実①:「一律35%」の誤解と、実績「24.3%」
開示される真実①:「一律35%」の誤解と、実績「24.3%」

「理論年収」とはどのように計算されるのか

手数料の計算基準となるのが「理論年収」です。これは実際に入社1年目に支払われた金額(源泉徴収票の額)ではなく、入社後1年間在籍したと仮定した場合の想定総支給額を指します。標準的な算定モデルは次のとおりです。

(基本月給+固定諸手当)×12か月+賞与等基準額+通勤手当=理論年収

固定諸手当には役職手当・住宅手当・資格手当などが含まれ、賞与等基準額は内定書に示された標準支給月数、または前年度実績から算出されます。一方、時間外勤務手当(残業代)、個人の成果に応じた歩合給、出張旅費などは、事後的な実働実績に基づくため理論年収の算定からは除外されるのが通例です。ただし固定残業代が基本給に組み込まれている場合は、その固定額が算入されます。

具体例として、基本月給35万円、役職手当5万円、年間賞与120万円(基本月給の3か月分相当)が内定時に提示された場合を考えます。この場合の理論年収は600万円となり、紹介料率が32%であれば、求人企業がエージェントへ支払う手数料は税抜192万円となります。実際の料率や算定条件は契約ごとに異なるため、この例がそのままあてはまるとは限りません。

なぜ手数料は高くなるのか、歩留まりと集客コストの構造

35%前後という手数料率は、エージェント側が求職者を集めるコストと、選考過程で発生する「歩留まり」の低さを反映した構造とみられます。中途採用における選考プロセスの平均的な通過率は、書類選考37.3%、一次面接通過約30.0%、最終面接通過約50.0%、内定承諾80.0%〜90.0%と推移し、応募から入社に至る累積の歩留まりは4.5%〜5.0%程度にとどまります。

エージェントが求職者1人を登録させるための集客単価(CPA)を仮に5万円とすると、100人の登録者を集めるコストは500万円です。このうち決定に至るのが3%(3人)だとすると、決定1件あたりに必要な実質的な獲得コストは約166万円という計算になります。これにキャリアアドバイザーの人件費やシステム維持費、早期離職に伴う手数料返還リスクなどを加味すると、事業を継続するには成約1件あたり年収の30〜35%程度の回収が必要になる、という構造が見えてきます。

自社で雇用関係を持たない紹介事業は、労働者の給与を売上原価として計上する派遣事業と比べて原価が低く抑えられる点も特徴です。有価証券報告書の比較では、ハイクラス紹介に特化した企業の営業利益率が25%前後に達する一方、派遣・BPO事業を主軸とする企業では利益率が4%程度にとどまるケースもあり、ビジネスモデルの違いが収益性に大きく影響しています(出典:各社有価証券報告書等)。

なぜ「35%」なのか? 歩留まりとCPAの冷徹な現実
なぜ「35%」なのか? 歩留まりとCPAの冷徹な現実

上限制手数料と届出制手数料、どちらが主流か

職業紹介の手数料には「上限制手数料」と「届出制手数料」の2種類があります。上限制は就職した求職者の6か月間の賃金の10.8%(免税事業者は10.3%)を上限とする古くからの制度で、求人受付時の手数料は710円が上限です。一方、届出制は1999年の職業安定法改正で確立された制度で、事前に届け出た料率(実務上の上限はおおむね50%)を初年度年収に乗じて徴収します。

令和6年度の徴収実績を見ると、この2つの制度の利用状況には大きな差があります。

手数料区分 令和6年度徴収額実績 構成比
上限制手数料 約26億円 約0.27%
届出制手数料 約9,808億円 約99.73%

(出典:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果」)

決定年収600万円のケースで比較すると、上限制では上限額が約32.4万円であるのに対し、届出制で相場とされる30%を適用した場合は180万円となり、事業者側が届出制を選ぶ経済的な合理性がうかがえます。現在ではほぼすべての事業者が届出制を採用しています。

令和7年4月の職業安定法改正で何が変わったのか

中途採用市場の拡大とともに、手数料をめぐる不透明さや、早期離職に伴うトラブルが課題として指摘されてきました。これを受けて厚生労働省は、令和7(2025)年4月1日を施行日として職業安定法の省令・指針を改正しました。主な変更点は次の3つです。

1つ目は、平均手数料率実績の開示義務化です。すべての職業紹介事業者は、前年度に常用就職の実績が多い上位5職種について、実際に徴収した平均手数料率を算出し、国が運営する「人材サービス総合サイト」に掲載することが義務付けられました。ただし該当職種の前年度実績が10件以下の場合は、個人が特定されるおそれがあるため掲載は不要とされています。

2つ目は、違約金規約の明示義務化です。求人企業との契約に違約金などのペナルティ費用に関する規定がある場合、その額や算定方法、発生条件、契約解除方法を、対面であれば書面の手交、非対面であれば郵送またはメール添付という形で、あらかじめ明示することが義務化されました。ウェブ規約へのリンクを示すだけの簡易な方法は不適切と判断されます。

3つ目は、お祝い金の禁止対象拡大です。職業紹介事業者による「就職お祝い金」の提供は令和3年4月から禁止されていましたが、令和7年4月からはこの規制が求人サイトなどの「募集情報等提供事業者」にも拡大されました。現金やギフト券、ポイント付与などは原則禁止となり、アンケート謝礼や来場特典など社会通念上適当と認められる500円程度の少額な例外を除き、金品による誘引は認められません。

【パラダイムシフト】令和7年4月 職業安定法改正の衝撃
【パラダイムシフト】令和7年4月 職業安定法改正の衝撃

手数料率の高さと早期離職率に関係はあるのか

「手数料が高いほど、エージェントは強引にマッチングさせて早期離職を招いているのではないか」という見方がしばしばされます。しかし厚生労働省が医師・看護・保育・介護の4職種について手数料率実績と就職後6か月以内の離職率を分析した結果では、両者のあいだに明確な相関関係は見られないとされています。

実際のデータを見ると、介護専門職は手数料率31.2%に対し離職率15.3%、保育士は手数料率33.9%に対し離職率12.2%と、比較的高い離職率が見られます。一方、法人・団体管理職員は手数料率34.6%に対し離職率4.9%、情報処理・通信技術者は手数料率31.2%に対し離職率2.9%と低水準です。手数料率がほぼ同水準でも離職率には大きな差があり、離職率の高さは手数料の仕組みそのものよりも、現場の労働環境や賃金水準など、業界ごとの構造的な要因に起因していると考えられます。

転職で年収は本当に上がるのか、雇用動向調査からみる実態

転職エージェントは年収アップの交渉を代行することが多いですが、すべての転職者が年収増加を実現しているわけではありません。厚生労働省の雇用動向調査による、転職入職者の前職と比較した賃金変動状況は次のとおりです。

調査期 増加した割合 変わらない割合 減少した割合
令和5年上半期 38.6% 26.4% 33.2%
令和7年上半期 39.4% 非公開 31.5%

(出典:厚生労働省「雇用動向調査結果の概況」)

令和5年上半期では「増加」が「減少」を5.4ポイント、令和7年上半期では7.9ポイント上回っており、全体としては増加が減少を上回る傾向にあります。とはいえ、統計全体で見れば転職者の3割強は前職より賃金が下がっているという事実も存在します。年収交渉が機能しやすいのは主に20代〜30代の市場価値が高い層や、成長産業への転職とされており、年齢や職種、個々の交渉力によって結果は大きく異なる点には注意が必要です。転職によって年収が上がるかどうかは個別の事情に左右されるため、一律に「転職すれば年収が上がる」とは言えません。

労働市場のリアル:「年収アップ」の不都合な真実
労働市場のリアル:「年収アップ」の不都合な真実

まとめ

「転職エージェントの手数料は年収の35%」という言説は、一部の採用難易度が高い職種の相場に近い数字であり、厚生労働省の統計に基づく全職種平均の実績は24.3%です。手数料の算定基準となる「理論年収」は、基本給・固定手当・賞与基準額・通勤手当をもとに計算され、残業代や歩合給は含まれません。手数料率の高さは、選考プロセスの低い歩留まりと集客コストを反映した構造的な結果であり、早期離職率との明確な相関は確認されていません。

令和7年4月の職業安定法改正により、手数料率実績の開示、違約金規約の明示、お祝い金の禁止対象拡大が義務化され、これまで不透明だった中途採用コストの比較が可能になりつつあります。転職で年収が上がるかどうかは個人の状況によって異なるため、エージェントやサービスを選ぶ際は、こうした公的データを参考にしながら、自身の状況に照らして判断することが大切です。

動画で見る

この記事と同じ調査をもとにした解説動画です。図解を音声で追いたい方はこちらをご覧ください。

よくある質問

転職エージェントの手数料は誰が払うのですか?

手数料は求人企業がエージェントへ支払う仕組みで、求職者本人が費用を負担することはありません。企業は決定者の理論年収に手数料率を掛けた金額を、入社後にエージェントへ支払います。

「理論年収」と実際の年収はどう違いますか?

理論年収は基本給・固定手当・賞与基準額・通勤手当をもとに算出した想定額で、残業代や歩合給は含まれません。源泉徴収票に記載される実際の支給額とは一致しないことがあります。

令和7年4月の法改正で何が変わりましたか?

手数料率の実績開示、違約金規約の明示、お祝い金の禁止対象拡大の3点が義務化され、これまで不透明だった中途採用コストを比較しやすくなりました。

手数料率が高いエージェントほど早期離職が多いのですか?

厚生労働省の分析では、手数料率実績と就職後6か月以内の離職率のあいだに明確な相関は確認されていません。離職率は業界の労働環境や賃金水準の影響が大きいとみられます。

次にやること

業界の構造を理解したうえで、自分の条件が相場のどこにあるかを確認します。

  1. 賃金構造基本統計調査で、自分の職種・年齢・地域の水準を確認する
  2. 現職の労働条件通知書で、割増賃金や手当の計算根拠を確かめる
  3. 相場観は1社の提示額ではなく、複数の求人情報で確認する

参考にした情報源

うち官公庁・公的機関等の一次資料 15件。数値は各機関の公表時点のものです。

  • 令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 令和4年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 株式会社インプレッション(impr.co.jp)
  • 転職エージェントの利益とその仕組み、相場を徹底解説(media.crowd-agent.com)
  • 人材紹介の手数料相場を解説。計算方法から返金制度を紹介 | お役立ち情報 – Sales Marker(sales-marker.jp)
  • 人材紹介サービスの手数料(紹介料)の相場は? 返金規定や算出方法を解説(hrbc.porters.jp)
  • 職業紹介業の紹介手数料~職業安定法上の規制と市場相場~(zaimupartners.biz)
  • 手数料について 第9回 | 職業・雇用関係情報等(shokugyo-kyokai.or.jp)
  • 第6 手数料 – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 労働者派遣制度・職業紹介事業の概要(cao.go.jp)
  • 職業紹介事業者を(minshokyo.or.jp)
  • 人材紹介の手数料・紹介料相場はいくら?誰が払うか・返金規定まで徹底解説(agent.bee-jobsharing.com)
  • 転職エージェントの費用の目安とは?中途採用にかかるコストを解説 – リクルートダイレクトスカウト(directscout.recruit.co.jp)
  • 人材紹介の手数料の決め方とは?手数料の概要や相場を紹介 – circusAGENT(service.circus-group.jp)
  • 採用の歩留まりとは?低下する原因や改善策を解説 – レバテック(levtech.jp)
  • リクルートの高収益構造を徹底検証!人材会社として時価総額世界一、「他社が真似できない」理由とは? | DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー電子版セレクション | ダイヤモンド・オンライン(diamond.jp)
  • 転職活動の平均応募社数は?書類選考・面接通過率、内定率はどれくらい? – マイナビ転職(tenshoku.mynavi.jp)
  • IR情報 | 株式会社 ジェイエイシーリクルートメント – JAC Recruitment(ir.jac-recruitment.jp)
  • 業績・財務 | IR情報 | 株式会社 ジェイエイシーリクルートメント – JAC Recruitment(ir.jac-recruitment.jp)
  • 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp)
  • FY2025 上期決算説明会 – PERSOL(パーソル)グループ(persol-group.co.jp)
  • パーソルホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態 – リサコ(corp-research.jp)
  • FY2024 決算説明会 – PERSOL(パーソル)グループ(persol-group.co.jp)
  • 有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書 – 日本病院会(hospital.or.jp)
  • [令和7年4月から] 求人サイト等 求職者への金銭・ギフト券"提供禁止"に(heartrock-noma.com)
  • 【令和7年4月】「就職お祝い金」の禁止規制強化:法的問題と事業者の取るべき対応を解説(monolith.law)
  • 有料職業紹介事業者の平均手数料率実績公開の義務化 – エキップ社会保険労務士法人(k-hamada.com)
  • 紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります(mhlw.go.jp)
  • 職業紹介事業における職種別手数料、離職状況についての資料を公表(厚労省) – PSRネットワーク(psrn.jp)
  • Q.職業安定法改正(紹介手数料率の公開)に伴う令和7年度以降の対応について – ヘルプページ(hrbc-support.porters.jp)
  • 紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります(jsite.mhlw.go.jp)
  • 職業紹介事業における職種別手数料、離職状況についての資料を公表(厚労省)(kaiketsu-j.com)
  • 雇用仲介事業者における、令和7年4月1日からの新ルールへの対応について(hakengyou.com)
  • 有料無料職業紹介関係(jsite.mhlw.go.jp)
  • 銭等提供・転職勧奨禁 の職業紹介事業許可条件化について – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 職業紹介事業における 職種別手数料、離職状況について – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 離職率は低下、入職超過率は拡大 – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
  • 3 転職入職者の賃金変動状況(mhlw.go.jp)
  • 転職者の離職理由と賃金の変動状況 ~厚生労働省「令和5年雇用動向調査」より(nagaoka-sharoushi.com)

本記事に掲載する年収・待遇等は公表統計に基づく一般的な水準であり、個別の求人条件を保証するものではありません。

本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。

本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日

コメント

タイトルとURLをコピーしました