この記事の要点
- 有料職業紹介の手数料収入は8,362億円で、常用就職1件あたり平均約93万円にのぼります。
- 手数料率は経営・金融・保険の専門職で34.6%、介護分野は20.2%と職種で大きく異なります。
- エン・ジャパンの国内人材紹介事業は売上9,895百万円に対し営業利益率はわずか0.6%でした。
- 2025年4月から平均手数料率の公開が義務化され、就職お祝い金の提供も原則禁止されます。
転職で年収が上がったという話を聞くと、「エージェントは相当な手数料を稼いでいるはずだ」と思う方は多いのではないでしょうか。実際、厚生労働省の調査では、有料職業紹介事業を通じた常用就職1件あたりの平均紹介手数料は約93万円にのぼります(出典:厚生労働省「令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」)。
しかし、この「高手数料」というイメージと、人材紹介会社の実際の儲けとの間には大きなギャップがあります。上場企業であるエン・ジャパンの決算を見ると、国内人材紹介事業の営業利益率は0.6%まで落ち込んだ期がありました(出典:エン・ジャパン決算資料)。手数料率が高くても、それがそのまま高収益に直結するわけではないのです。この記事では、公的統計と企業の決算データをもとに、転職エージェント業界の手数料の実態と、なぜ薄利になりやすいのかを整理します。
転職エージェントの手数料はいくらかかっているのか
厚生労働省の「令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」によると、有料職業紹介事業における手数料収入の総額は約8,362億円(前年度比8.6%増)でした(出典:厚生労働省)。このうち常用就職(雇用期間4カ月以上の無期または有期雇用)に関する手数料収入は約7,821億円(同7.9%増)、常用就職件数は843,950件(同8.4%増)です。この2つの数字から算出される、常用就職1件あたりの平均紹介手数料は約93万円となります。
この背景には、転職市場そのものの活発さがあります。厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」によれば、常用労働者の入職率は14.8%、離職率は14.2%です(出典:厚生労働省)。転職によって前職より賃金が「増加」した人の割合は40.5%(前年比3.3ポイント上昇)で、「減少」した人の割合は29.4%(同3.0ポイント低下)となっており、条件面で好転する転職が増える傾向にあります。

職種によって手数料率と離職率は大きく違う
人材紹介の手数料は、多くの場合「成功報酬型」で、求職者の想定年収に一定の手数料率を掛けて算出されます。この手数料率は職種によって大きく異なり、厚生労働省が公表したデータからは以下のような差が見えてきます。
| 取扱職種 | 平均手数料率実績 | 平均離職率 |
|---|---|---|
| 経営・金融・保険の専門的職業 | 34.6% | 2.0% |
| 技術者(IT・開発除く) | 33.9% | 2.9% |
| 営業の職業 | 31.2% | 5.4% |
| IT・開発関連技術者 | 30.0% | 2.9% |
| 保育士 | 24.3% | 12.2% |
| 一般事務・秘書・受付の職業 | 24.1% | 14.4% |
| 医師 | 22.0% | 3.0%(別サンプルでは5.3%) |
| 看護師、准看護師 | 21.6% | 10.5% |
| 介護の専門的職業 | 20.2% | 15.3% |
(出典:厚生労働省「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」)
経営・金融・保険や技術者、IT・開発関連職といったホワイトカラー系の職種は、手数料率が30%を超える一方で離職率は2〜3%台と低く、採用後の定着も良い傾向にあります。これに対して、保育士や介護、一般事務といった職種は、手数料率が20%台前半にとどまる一方、離職率は10%台後半に達しています。同じ「紹介1件」でも、職種によって収益性とその後の安定性が大きく異なることがわかります。
2024年・2025年の法改正で何が変わるのか
転職市場の拡大とともに、求職者保護と情報の透明化を目的とした法規制も強化されています。
2024年4月1日には、改正職業安定法施行規則が施行され、労働条件の明示ルールが厳格化されました。求人票や労働条件通知書には「就業場所および従事すべき業務の変更の範囲」や「有期労働契約の更新基準」をあらかじめ明示することが義務づけられ、違反した事業者には最大30万円の罰金が科されます(出典:厚生労働省「求職者への労働条件明示のルールなどが変わります!」)。実態と異なる好条件を示す、いわゆる「おとり求人」を防ぐことが狙いです。
さらに2025年4月1日からは、有料職業紹介事業者に対して、取扱職種ごとの「平均手数料率実績(前年度分)」を厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で公開することが義務化されます(常用就職実績が10件以下の場合は免除)。この数値は、求人者から徴収した手数料の総額を求職者の予定年収の総額で除して算出されます(出典:厚生労働省)。あわせて、求人サイトなど「募集情報等提供事業者」による「就職お祝い金」の提供も原則禁止されます。これまでブラックボックスだった手数料の実態が可視化されることで、業界内の価格競争が強まる可能性があります。

150万円の成功報酬はどこに消えるのか
想定年収500万円の求職者が手数料率30%で成約した場合、1件あたりの売上は150万円になります。一見すると効率の良いビジネスに見えますが、この売上の前段階には大きなコストが存在します。
まず、求職者を集めるための「求職者獲得コスト(CPA)」です。仮にCPAが5万円、実際に入社に至る成約率が5%だとすると、1名の入社決定を得るためのコスト(CPH)は100万円に達する計算になります。ここからさらに、キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーの固定人件費が差し引かれます。大手エージェントでは、人件費が売上高の50%〜60%を占めることが一般的で、コンサルタント1人あたりの月間成約件数が1〜1.5件を下回ると、その部門は赤字に転落しやすくなります。
つまり、手数料率そのものは高くても、求職者獲得と人件費という2つの大きなコストが、150万円の売上を大きく圧縮する構造になっているのです。

エン・ジャパンの決算に見る「儲からない人材紹介」
この構造を裏付けるのが、転職支援大手エン・ジャパン株式会社(東証プライム、証券コード4849)の決算です。同社の第25期(2025年3月期)の連結業績は、売上高65,678百万円(前期比2.9%減)、営業利益5,892百万円(同14.2%増)でした。国内の主要セグメント別に見ると、次のような結果になっています。
| セグメント | 売上高(2025/3期) | 営業利益(2025/3期) | 営業利益率 | 前期比営業利益増減 |
|---|---|---|---|---|
| 国内求人サイト(エン転職、エン派遣等) | 25,000百万円 | 6,590百万円 | 26.4% | ▲18.4% |
| 国内人材紹介(エンエージェント等) | 9,895百万円 | 60百万円 | 0.6% | ▲95.2%(前年1,240百万円) |
| 人財プラットフォーム(AMBI、ミドルの転職) | 7,800百万円 | 860百万円 | 11.0% | 黒字化(前年2.5億円の損失) |
| HR-Tech(engage) | 9,650百万円 | ▲2,010百万円 | 赤字 | 赤字幅縮小(前年3,510百万円の損失) |
(出典:エン・ジャパン決算短信・決算説明資料をもとにしたセグメント別概算値)
注目すべきは、国内人材紹介セグメントの営業利益率が0.6%にとどまっている点です。売上高は9,895百万円に達しているにもかかわらず、営業利益はわずか60百万円しか残っていません。前年のセグメント利益は1,240百万円だったため、利益額は前年から11.8億円減少したことになります。決算資料では、この要因についてコンサルタントの増員が計画通りの収益拡大につながらなかったことが説明されています。人件費という固定費が先行して膨らみ、成約件数の伸びがそれに追いつかなかった形です。

なぜ求人サイトは儲かり、人材紹介は薄利になりやすいのか
同じ転職支援ビジネスでも、収益性には大きな差があります。上の表にあるとおり、国内求人サイト事業の営業利益率は26.4%と高水準です。求人サイトは、一度プラットフォームとしての利用者基盤ができれば、掲載件数を増やしても追加コストが大きく増えにくい性質を持っています。
一方、人材紹介は、成約件数を増やすためにキャリアアドバイザーを継続的に採用・教育する必要があり、労働集約的な性質が強いビジネスです。この違いは、エージェントの担当体制にも表れます。エン・ジャパンが主戦場とする若手・中堅層向けの人材紹介では、求職者担当と企業担当が分かれる「片面型(分業型)」が主流です。これに対し、競合のJAC Recruitmentは、1人のコンサルタントが求職者と企業の双方を担当する「両面型」を採用しており、同社の営業利益率は23.0%〜25.3%で推移しています(出典:JAC Recruitment決算資料)。片面型はコミュニケーションの分業によるコストがかかりやすく、両面型はマッチング精度が高くなりやすいという違いが、収益性の差につながっていると考えられます。
AMBIやミドルの転職は「人材紹介」ではない
もうひとつ誤解されやすいのが、「AMBI」や「ミドルの転職」の位置づけです。これらはエン・ジャパンの決算区分上、労働集約的な「国内人材紹介」セグメントではなく、「人財プラットフォーム」セグメントに含まれています。
これらのサービスは、エン・ジャパン自身がキャリアアドバイザーとして求職者と直接面談する場ではなく、求職者データベースを他の人材紹介会社や企業に有料で提供する仕組みです。利用する紹介会社は、基本利用料として年間60万〜120万円を支払い、成約時にはさらに理論年収の20%を成果ロイヤリティとして支払います。求職者対応や企業との折衝といった労働集約的な業務は、データベースを利用する側の紹介会社が担うため、エン・ジャパン自身はアドバイザーの人件費リスクを抱えずに済みます。この結果、人財プラットフォームセグメントは前年の損失(2.5億円)から一転し、8.6億円の営業黒字、営業利益率11.0%を達成しています。

まとめ
有料職業紹介の手数料収入総額は8,362億円、常用就職1件あたりの平均手数料は約93万円と、数字だけを見れば人材紹介は高収益なビジネスに見えます。しかし、手数料率が30%を超えるホワイトカラー領域でも、求職者獲得コストや固定人件費といった見えないコストが利益を圧縮しやすく、エン・ジャパンの国内人材紹介セグメントのように営業利益率が0.6%まで落ち込む例もあります。
一方で、同じ企業グループの中でも、求人サイト事業や、データベースを外部に提供する人財プラットフォーム事業は、比較的高い営業利益率を維持しています。これは、労働集約型のビジネスモデルと、アセットライトなプラットフォーム型のビジネスモデルとで、収益構造そのものが異なることを示しています。
また、2025年4月からは平均手数料率実績の公開が義務化されるため、今後は事業者ごとの手数料水準を比較しやすくなる見込みです。転職活動でエージェントを利用する際は、手数料率の高さだけでなく、どのような担当体制でサポートを受けられるかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。なお、ここで紹介した手数料率や離職率、収益性は職種や企業、契約条件によって異なり、個別の状況によって当てはまり方は変わります。
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よくある質問
転職エージェントの手数料は誰が払うのですか?
多くの場合、手数料は求職者ではなく、採用する企業側が人材紹介会社に支払います。厚生労働省の統計でも、常用就職1件あたり平均約93万円の手数料が企業から支払われる計算になります。求職者本人が費用を負担する仕組みではありません。
手数料率が高い人材紹介会社ほど良いサービスなのですか?
手数料率の高さは職種の専門性や採用の難易度を反映したものであり、サービスの質の高さをそのまま保証するものではありません。担当者の対応体制やサポート内容もあわせて確認することが大切です。
2025年の法改正で転職エージェント選びはどう変わりますか?
2025年4月から平均手数料率実績の公開が義務化されるため、事業者ごとの手数料水準を比較しやすくなる見込みです。ただし手数料率だけでなく、担当者の実績やサポート体制も含めて判断することが望まれます。
次にやること
業界の構造を理解したうえで、自分の条件が相場のどこにあるかを確認します。
- 賃金構造基本統計調査で、自分の職種・年齢・地域の水準を確認する
- 現職の労働条件通知書で、割増賃金や手当の計算根拠を確かめる
- 相場観は1社の提示額ではなく、複数の求人情報で確認する
参考にした情報源
うち官公庁・公的機関等の一次資料 7件。数値は各機関の公表時点のものです。
- 令和5年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報) – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 人材紹介の市場規模は?厚労省統計で最新動向と“数字が違う理由”を社内説明できる形にする(inrevo.co.jp)
- 【職業紹介事業者・募集情報等提供事業者の皆様へ】職業安定法に基づく省令及び指針の一部改正 | 社会保険労務士シモダイラ事務所(shimodaira-office.com)
- 令和6年「雇用動向調査」の結果を公表(ameblo.jp)
- 【令和6年「雇用動向調査」の調査結果を公表しました ~入職率、離職率は低下、入職超過率は縮小、転職入職者の賃金は、前職と比べて「増加」した割合が上昇~】 – 宮城県仙台市の行政書士・特定社会保険労務士 へんみ事務所(henmi-adm.jp)
- 人材紹介の利益率はどのくらい? – 求人データベースとは?(recruitment-db.com)
- 人材スカウト代行サービスの料金相場とは?料金体系や選び方を解説 – ミイダス(corp.miidas.jp)
- 職業紹介事業における 職種別手数料、離職状況について – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 日本医師会・四病院団体協議会 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書 ~医療分(med.or.jp)
- 求職者への労働条件明示のルールなどが変わります! – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 職業安定法改正2025|求人広告のNG表現と新ルール対応チェック – 株式会社Talenco(talenco.jp)
- 職業安定法の2025年までの改正や企業が留意すべき点を分かりやすく解説 – テンプスタッフ(tempstaff.co.jp)
- 紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります(jsite.mhlw.go.jp)
- 有料職業紹介事業者の平均手数料率実績公開の義務化 – エキップ社会保険労務士法人(k-hamada.com)
- 募集情報等提供事業者)は新たなルールへの対応が必要です – 厚生労働省(mhlw.go.jp)
- 採用CPA相場を職種別に比較|計算方法と費用を抑える7つの施策【2026年版】(buddy-data.co.jp)
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- ブリッジレポート:(4849)エン・ジャパン 2025年3月期決算(bridge-salon.jp)
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- 2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) – Amazon S3(s3-ap-northeast-1.amazonaws.com)
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- 2025年3月期第2四半期 決算説明資料 – エン・ジャパン(corp.en-japan.com)
- 2025年3月期通期 決算説明資料 – Amazon S3(s3-ap-northeast-1.amazonaws.com)
- 2025年3月期第3四半期 決算説明資料(corp.en-japan.com)
- 決算戦略説明会資料(finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp)
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本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。
本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日


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