年金400万円以下でも確定申告不要制度に潜む落とし穴とは

年金400万円以下でも確定申告不要制度に潜む落とし穴とは 年金

この記事の要点

  • 年金収入400万円以下かつ他の所得20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要です。
  • 所得税は不要でも住民税には少額免除の規定がなく、副収入があれば申告が必要になります。
  • 年金240万円のケースで医療費控除を申告すると年間約22,600円の還付・減税になります。
  • 障害年金・遺族年金は非課税のため、400万円の年金収入枠には含めずに計算します。
  • 税金の還付を受け取れる還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間いつでも提出可能です。

「年金収入が400万円以下だから確定申告はいらない」——多くの年金受給者はそう理解しています。この理解は所得税に関しては正しいのですが、それだけで安心してしまうと、副収入がある人は住民税の申告漏れになったり、医療費控除など本来受けられる控除を使わずに数万円単位の税金を余分に納めたままになったりすることがあります(出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」)。

公的年金等に係る確定申告不要制度は、所得税法第121条第3項に基づき、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ年金以外の所得金額が20万円以下の場合に、所得税の確定申告をしなくてよいとする制度です。ただしこの制度は「申告してはいけない」という意味ではなく、あくまで「申告しなくても罰則がない」というルールにすぎません。

どのケースで申告が必要になり、どのケースで申告した方が得になるのかは、年金額や他の所得の有無、源泉徴収の状況によって変わります。以下では制度の仕組みと、見落としやすいポイントを整理します。

確定申告不要制度とは?年金400万円以下の要件を整理

公的年金等に係る確定申告不要制度は、次の2つの要件をどちらも満たす場合に、所得税の確定申告を省略できるという制度です(出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」)。

  • 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であること
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること

このどちらか一方でも超える場合は、所得税の確定申告が必要になります。たとえば年金収入が400万円を超えていれば、他に所得がなくても確定申告の対象です。逆に年金収入が400万円以下でも、給与や個人年金、原稿料などの所得を合わせて20万円を超えていれば、確定申告が必要になります。

年金控除と不要制度の基礎知識
年金控除と不要制度の基礎知識

公的年金等控除の仕組みと令和2年改正のポイント

年金にかかる税金を考えるうえで土台になるのが、公的年金等控除です。令和2年(2020年)の税制改正では、公的年金等控除額が一律10万円引き下げられる一方、基礎控除が10万円引き上げられたため、中低所得層の年金受給者の税負担は実質的に大きく変わらない設計になっています。あわせて、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額の上限として195万5千円が新設されました(出典:国税庁)。

65歳以上・65歳未満で控除額の区分が異なります。合計所得金額が1,000万円以下の場合の控除額は次のとおりです。

年齢区分 公的年金等の収入金額 控除額の計算式
65歳以上 110万円以下 110万円(全額控除)
65歳以上 110万円超〜330万円未満 110万円
65歳以上 330万円以上〜410万円未満 収入金額×25%+27.5万円
65歳以上 410万円以上〜770万円未満 収入金額×15%+68.5万円
65歳未満 60万円以下 60万円(全額控除)
65歳未満 60万円超〜130万円未満 60万円
65歳未満 130万円以上〜410万円未満 収入金額×25%+27.5万円

(出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」)

この表からわかるとおり、65歳以上であれば年金収入が110万円以下の場合、雑所得は0円になります。年金から所得税が源泉徴収されるのも、この控除後の金額がベースになっています。

65歳未満 60万円 と 65歳以上 110万円 の比較
65歳未満 60万円 と 65歳以上 110万円 の比較

所得税は不要でも住民税の申告が必要になることがある

確定申告不要制度でよく見落とされるのが、この制度が所得税(国税)のルールであって、住民税(地方税)には適用されないという点です。所得税法には「年金以外の所得が20万円以下なら申告不要」という規定がありますが、地方税法には同様の少額免除規定が存在しません。

そのため、個人年金(私的年金)や副業による所得が20万円以下であっても、住民税の申告は別途必要になる場合があります。所得税の確定申告をすれば、そのデータが自治体に連動するため住民税の申告を重ねて行う必要はなくなりますが、所得税の確定申告をしない場合は、市区町村の窓口で住民税の申告を行う必要があります。

状況によって、所得税と住民税それぞれの申告要否や、申告した方が得になるかどうかは変わってきます。代表的なパターンを整理すると次のようになります。

パターン 状況 所得税の確定申告 住民税の申告
A 年金150万円のみ、他所得なし 不要 不要
B 年金240万円のみ、医療費控除の対象あり 不要(申告すると還付の可能性) 不要(申告すると減額の可能性)
C 年金200万円+個人年金・副業所得15万円 不要 要申告
D 年金350万円+特定口座で源泉徴収済みの株式配当等 不要(申告は任意) 不要(申告は任意)

(出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」をもとに整理)

このように、年金以外の所得がある場合は、所得税が不要でも住民税の申告が必要かどうかを別途確認する必要があります。

所得税と住民税の申告ルールの違い
所得税と住民税の申告ルールの違い

医療費控除を申告すれば数万円が戻ってくるケースも

確定申告不要制度は「申告しなくても罰則がない」制度であって、「申告してはいけない」制度ではありません。年金から所得税が源泉徴収されている人が、医療費控除など各種控除の対象になっているにもかかわらず何も申告しない場合、納めすぎた税金がそのままになってしまいます。

医療費控除は、年間に支払った医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超える場合に対象となる控除です。年金からの源泉徴収税率は、控除後の年金額に5.105%(復興特別所得税を含む)を掛けた金額です(出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」)。

たとえば、67歳・単身で公的年金収入が240万円のみ、年間の医療費支払いが25万円というケースで試算すると、医療費控除額は25万円から10万円を差し引いた15万円になります。この控除を確定申告(還付申告)すると、所得税の還付額は15万円×5.105%で約7,600円、住民税の減額分は15万円×10%で約15,000円となり、合計で年間約22,600円が戻ってくる計算になります。これを5年間放置すると、単純計算で約11万円分の還付を受けられないままになる可能性があります。あくまで条件を単純化した試算であり、実際の還付額は源泉徴収された税額や他の控除の有無によって変わります。

住民税額の試算:15000円
住民税額の試算:15000円

障害年金・遺族年金は課税対象に含まれない

確定申告不要制度の「年金収入400万円以下」という基準を考えるときに誤解しやすいのが、障害年金や遺族年金の扱いです。障害年金・遺族年金は非課税所得であり、確定申告不要制度における「年金収入400万円以下」の判定に含める必要はありません(出典:国税庁)。老齢年金と障害年金・遺族年金を両方受け取っている場合でも、課税対象になるのは老齢年金部分のみで計算します。

在職しながら年金を受け取る人は支給停止調整額にも注目

働きながら厚生年金を受け取る人にとっては、税金の話とは別に、在職老齢年金の支給停止調整額の見直しも押さえておきたいポイントです。総報酬月額相当額と基本月額の合計が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止される仕組みで、この基準となる支給停止調整額は令和6年度が50万円、令和7年度が51万円、令和8年4月施行の制度改正により65万円へ引き上げられます(出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直し(年金制度改正法)」)。基準額が上がることで、在職中に年金の一部が支給停止される人は以前より少なくなる方向の見直しです。

確定申告がかえって不利になるケースに注意

医療費控除などで還付を受けられるからといって、あらゆる所得を確定申告に含めるべきとは限りません。とくに注意したいのが、特定口座で源泉徴収済みの株式配当や譲渡益を、医療費控除の還付目当てに確定申告へ含めてしまうケースです。

これらの所得を確定申告に含めると、所得税の一部が還付される一方で、合計所得金額が上昇します。合計所得金額が上がると、介護保険料の段階区分が上がったり、75歳以上の後期高齢者医療の窓口負担割合が1割から2割・3割に変わったり、高額療養費の自己負担上限額が引き上がったりすることがあります。その結果、還付された所得税額よりも、介護保険料や医療費の負担増の方が大きくなる場合があります。どの選択が有利かは、年金額・他の所得・世帯構成によって変わるため、一律には判断できません。

確定申告が逆効果になるケースの罠
確定申告が逆効果になるケースの罠

還付申告は5年間さかのぼって提出できる

通常の確定申告(納税が必要な場合)の期限は毎年2月16日から3月15日ですが、税金を取り戻すための還付申告には、この期限は適用されません。還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間、いつでも提出することができます(出典:国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」)。

たとえば2021年分の医療費控除の還付申告であれば、2026年12月31日まで提出が可能です。過去の医療費の領収書が残っている場合は、さかのぼって還付申告を検討する余地があります。なお、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書は、毎年10月下旬から11月上旬ごろに日本年金機構へ提出する書類で、これを提出していない場合は源泉徴収額が高めに計算されている可能性があります(出典:日本年金機構「年金と税金(公的年金等の源泉徴収)」)。

まとめ

公的年金等に係る確定申告不要制度は、年金収入400万円以下・他の所得20万円以下という条件を満たせば所得税の確定申告をしなくてよいという制度であり、申告そのものを禁止するものではありません。所得税が不要でも住民税の申告が必要になる場合があること、医療費控除など各種控除がある場合は確定申告をした方が有利になり得ること、逆に株式配当等をまとめて申告すると介護保険料や医療費の窓口負担が増える場合があることなど、判断が分かれるポイントがいくつもあります。

自分がどのパターンに当てはまるかは、年金額・源泉徴収の有無・他の所得の種類によって異なります。源泉徴収票の内容を確認したうえで、必要に応じて税務署や市区町村の窓口で個別に相談することをおすすめします。

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よくある質問

年金の確定申告不要制度とは何ですか?

公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下の場合に、所得税の確定申告をしなくてよいとする制度です(所得税法第121条第3項)。ただし住民税の申告は別に必要になる場合があります。

年金収入が240万円でも確定申告した方がいいですか?

医療費控除や生命保険料控除など申告不要制度では反映されない控除がある場合、確定申告(還付申告)をすることで源泉徴収された所得税と住民税の両方が軽減される可能性があります。個別の状況によって損得は変わります。

副業の所得が15万円あります。何か手続きは必要ですか?

所得税の確定申告は不要ですが、住民税には20万円以下の少額免除規定がないため、お住まいの市区町村への住民税の申告が必要です。税務署で確定申告をすれば住民税申告も自動的に完了します。

還付申告はいつまで提出できますか?

還付申告には対象年の翌年1月1日から5年間の提出期限があります。例えば2021年分の医療費控除の還付申告は2026年12月31日まで提出可能です(出典:国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」)。

次にやること

制度の全体像を掴んだら、自分の記録に基づく金額を確認する段階です。

  1. ねんきんネットで自分の年金記録と見込受給額を確認する
  2. 未納・未加入期間があれば、追納できる期限内かを調べる
  3. 判断に迷う場合は年金事務所の予約相談(無料)を利用する

参考にした情報源

  • https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000185614.html`()
  • https://www.nenkin.go.jp/service/tanoshimi/shikyu/tax/`()
  • https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm`()
  • https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1605.htm`()

本記事は公的統計と公表資料をもとにした一般的な解説であり、個別の年金額・受給資格を保証するものではありません。ご自身の年金記録に基づく正確な見込額は、ねんきんネットまたはお近くの年金事務所でご確認ください。

本記事は公表資料をもとに作成した一般的な解説です。制度は改正され統計は更新されます。実際の手続き・判断にあたっては所管の官公庁および専門機関の最新情報をご確認ください。詳細は免責事項をご覧ください。

本記事は公的統計等の調査資料を根拠に、AIを利用して作成し、公開前に数値と表現の検査を行っています。作成手順は編集方針とAI生成コンテンツについてに公開しています。最終更新:2026年7月27日

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